「コロナ淘汰」を超えて生き残るために必要なものとは?

Medical Life Science Laboratory

現在、全世界で感染の拡大が続いている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は人を襲う淘汰の大波となっています。

どうすれば、そんな淘汰を超えて生き残ることができるのか――withコロナのフェーズでは確認しておく必要がありそうです。

■人類を淘汰しつつあるSARS-CoV-2

本コラムを書いている時点で、全世界の感染者数は1400万人にのぼっています。1日あたり20万人を超える新規感染者が発生しており、死亡者数もすでに60万人を上回っています。

拡大の勢いはまだまだ止まりそうにありませんが、その一方、多くの人は感染しても軽症もしくは無症状であり、重症化したり死亡したりする人は少数にとどまります。

人類はSARS-CoV-2の登場により「ウイルスと共存してwithコロナの時代を生き抜ける人」と「そうでない人」に分別されつつあるのです。

■生物の進化を支えてきた自然淘汰とは

自然淘汰はイギリスの学者、チャールズ・ダーウィンが唱えた学説です。「生物は世代を経る中で常にランダムな変化を続けており、環境に偶然適応できた種だけが生き残る」というのが、その概要です。

少しわかりにくいかもしれないので、例をあげて解説してみます。たとえば、ある島に地面を歩くことしかできない草食性のトカゲがいたとしましょう。

世代を経て、そのトカゲから「木に登れる種」と「海に潜れる種」が生まれると、その島にはもとの種を含めて3種類のトカゲがいることになります。

環境がそのままなら3種類のトカゲは共存できますが、生存に関わる変化が起きると、淘汰が始まります。たとえば、あるとき気候が激変して、「地上の植物がほとんど枯れてしまったが、海中には海藻が生えている」という状況に陥ったとします。

地面を歩くことしかできないトカゲや木に登れるトカゲはエサをとることができず、死滅してしまいます。一方、海に潜れるトカゲは海藻を食べて生き延び、子孫を残せます。

気候変動という環境の変化により、その島にいるのは海に潜れるトカゲだけとなります。これが自然淘汰です。

■淘汰因子は遺伝的特性だけではない

昨年から世界中に拡大しはじめたSARS-CoV-2は前述の気候変動と同じく、人という種の生存をおびやかす環境の変化と言えます。

この変化に対応する因子はいくつかあると言われます。たとえば、免疫反応に直結するHLA(ヒト白血球抗原)のタイプにより、感染した場合の重症化率や死亡率が異なることが分わっています。

「海に潜れるトカゲ」が生き残れたように、「SARS-CoV-2に強いHLAタイプ」という遺伝的特性を備え持っている人はwithコロナの社会で生き残りやすいのです。

ただ、withコロナの環境下で生存の確率に影響しているのはそういった遺伝的な因子だけではありません。たとえば、糖尿病患者はSARS-CoV-2に感染した場合、重症化しやすいことが知られています。

糖尿病の発症には遺伝的な特性も関係しますが、2型糖尿病の主な原因は生活習慣です。生活習慣を変えれば、SARS-CoV-2による死亡リスクを抑えられるのです。

トカゲは生活様式を変えられません。木に登るトカゲが「泳ぎを覚えよう」と考えることは非常に稀です。でも、人は「食事の量や質に気をつける」「計画的に運動をする」といった方向に人は生活習慣を変えることで、環境の変化に対応できるのです。

■淘汰を超えて生き残るために必要なこと

このコラムではすでに何度か語ってきましたが、SARS-CoV-2と共存するためのキーポイントは主に2つあります。

一つは免疫の適切なはたらきを維持すること。感染を避ける努力も必要ですが、それぞれの人にとって感染のリスクが大幅減少するのは、感染して抗体ができた後、もしくは感染により記憶細胞(感染したことを覚えている細胞)の備えができた後です。

つまり、いずれ感染することを織り込んだ上で、その際に重症化しないよう、免疫の状態を常に整えておくことが大切なのです。

もう一つは正しい情報をいち早く取得することです。SARS-CoV-2は人類が初めて出会う病原体なので、まだまだわからないことだらけです。

世界中の研究者が毎日のように新たな情報を発信しているので、それらにいち早くアクセスすれば、有効な対処方法や暮らし方を知ることができます。

ただし、「新しい情報=正しい情報」ではないので、その点には注意が必要です。SARS-CoV-2については、権威とされる公的な機関が間違った情報を発信することすら珍しくありません。

WHO(世界保健機関)は感染が広がりつつあった当初、「健康な人がマスクを着用すべきだと判断するには十分な証拠はない」として、マスクの効果について否定的な見解を発表しました。

ところが、研究が進む中で、飛沫による感染リスクを引き下げる効果がわかってきたことから、「一般市民のマスク着用を奨励するよう助言する」と、方針を180度転換しました。

「WHOが言っているのだから」とマスクをつけずに人と接して感染した人も少なからずいたはずです。

このように、正しい情報を見極めるのは容易ではありません。そんな中、大切なのは常に多様な情報源にアクセスして、いろいろな知識を集めることです。

「マスクは不要」という情報を得たら、「マスクは必要」という情報も探してみて、どちらの論拠に説得力があるか、考えてみてください。

それでも判断が難しいときには、「間違っていたとしてもリスクが少ないのはどちらだろうか?」と考えてみると、正しい選択をしやすくなります。

「マスクは必要」を信じて、外出時には必ずマスクを着用していた場合、もしその情報が間違っていたとしても、発生する問題は多少の無駄な出費と暑苦しさくらいです。

一方、「マスクは不要」を信じて、着用しなかった場合、もしその情報が間違っていたら、取り返しのつかない健康問題が発生しかねません。

withコロナの環境下では、情報へのアクセス能力や論理的な判断力、といった特性でも、人は淘汰されるのです。

■まとめ

自然淘汰は「環境の変化vs遺伝的特性」という、ある意味単純な対決の構図だと言えます。多くの生物は環境の変化に合わせて、生活様式を劇的に変化させられないためです。

幸いなことに、人間だけは情報の共有により、適切な生活様式をいち早く取り入れ、環境の変化に対応することが可能です。命を守るためにどんな暮らし方を選択するのか、少し考えてみる必要がありそうです。

 

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