コラム

政府が布マスクの配布を実施したり、マスクを求めてドラッグストアに長蛇の列ができるなど、マスクを巡る混乱が続いています。ちまたでは「マスクに感染を防ぐ効果はない」とも言われており、何が本当なのか判断に迷うところです。マスクは着けるべきか、それとも不要なのか、調べてみました。

WHOは「効果なし」 米疾病管理予防センターは市民の着用を推奨

新型コロナウイルス感染が地球規模で広がる中、世界中で不足しているのがマスクです。国内でもマスクを買う目的で人が集まり列をなしてしまうなど、感染を助長しかねない状況すら報告されています。

ところが、マスクの効果については公的な見解にもブレがあり、どう考えるのが正解か判断しかねている人も多いのではないでしょうか? 

世界保健機関(WHO)は2月末までに「せきやくしゃみといった症状がない人は公共の場でマスクを着ける必要はない」という見解を発表しました。その基本となっているのは「マスクを着ける意味があるのは、飛沫により感染を広げる危険性がある人だけ」という考えです。

一方、アメリカにおける感染症対策の中核であるアメリカ疾病管理予防センター(CDC)では症状がない一般市民についてもマスクの着用を勧めています。

一見矛盾しているように見えますが、両機関に共通しているのは「マスクは感染者がウイルスを他人にうつさないためには有効だが、装着したからといって感染を防げるわけではない」という考え方です。

すき間の方が大きいからウイルスに効果なし?

ところが、こういった考え方は一般の人がマスクに期待する効果にはかなりズレがあります。「自身が感染源にならないため」と考えてマスクを装着する人よりも、「他人からうつされにくくなるように」と考えて着ける人の方が実際には圧倒的に多いためです。

WHOやCDCが伝えるとおり、マスクには装着している人の感染を予防する効果はないのでしょうか? 一般にはこの疑問に対して、「繊維の目が大きいため、ウイルスはその間を通り抜けてしまう」と説明されています。

一般的な使い捨てマスク(不織布マスク)の場合、繊維のすき間は5㎛程度とされています。一方、新型コロナウイルスの大きさは0.1㎛程度。1/50しかないため、「素通り」してしまう、というのが「マスクで予防できない」説の根拠です。

ちなみに、スギ花粉は繊維のすき間より大きい30㎛程度、くしゃみや咳の飛沫は5㎛程度なので、一般的なマスクでも防げる、とされています。

しかしながら、エアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体)について研究発表を行っている日本エアロゾル学会では、新型コロナウイルスに対するマスクの効果について、まったく異なる見解を発表しています。

「極小のウイルスはブラウン運動をするので、繊維と接触して絡め取られてしまう」というのが、同学会の見解です。「「ウイルスやアレルゲンは小さいので、マスク繊維の隙間を通り抜ける」という説明は根本的に間違っています」と言い切っており、一般の見解とは真逆です。

ウイルス吸入を防ぐ効果NHKも認めた!

実はウイルス感染に対するマスクの予防効果についてはNHKが行った実験でも一部、認められています。人気番組「ためしてガッテン」において行われた実験では、正しく装着すれば、ウイルスに対する効果をうたっていない不織布マスクでも、0.1㎛の粒子を97.25%をカットできる、という結果が出たのです。

「ウイルス・花粉・ほこり99%カット」という表示があるマスクはもちろん「花粉・ほこりをシャットアウト」としか表示されていないマスクでも、同等の結果が出ているので、不織布のマスクには一般に考えられているよりもかなり高い効果がある、と言えそうです。

マスクの正しい選び方と装着の仕方

それでは、マスクにウイルスの吸入を防ぐ一定の効果があるにもかかわらず、着けても着けなくても、装着者自身の感染率はほとんど違わない、と言われるのはなぜでしょう?

大きな理由として考えられるのは、マスクを正しく装着できている人が少ない、という事実です。NHKが行った実験でも、顔とマスクの間にすき間ができてしまう状態では、ウイルスの吸入をまったく防げませんでした。

マスクが感染予防効果を発揮するのは、鼻梁に当たるワイヤーを適切に曲げるなどの工夫により、正しく装着した時だけなのです。

したがって、政府が今回配布している布マスクについては効果に疑問符がつきます。ワイヤーが入っておらず、サイズも小さいので、どうしてもすき間ができる可能性が高いためです。

マスクの効果を高めるためには手洗いが必須

マスクの装着がウイルス感染のリスク低下にあまりつながっていない原因は実はもう一つあります。かぜやインフルエンザ、新型コロナウイルスなどは鼻や喉、目の粘膜から感染するため、飛沫を直接吸入したり、浴びたりすることが主な感染ルートだと思われていますが、そうではありません。

アメリカで1980年代に行われた実験によると、かぜを引いた人と15分間歌をうたったり、会話したりした人の感染率が8%だったのに対して、かぜをひいている人が触ったコップに触れた人の感染率は50%にのぼったといいます。

つまり、飛沫による直接的な感染よりも、接触による感染――ウイルスが手につき、その手で顔を触ることによる感染の方が圧倒的に多かったのです。

新型コロナウイルスもかぜのウイルスと同じく、上気道への感染が主なので、同様の性質を持っているはずだと言われます。そのため、マスクで防げる割合はあまり多くない、と考えられているのです。

とはいえ、この顔を触る感染ルートを防ぐ意味でも、マスクには一定の効果があります。鼻や口を覆うことで、手で直接触る頻度を減らせるためです。「顔を触ってはいけない。マスクはそのためのものでもある」と意識して装着すれば、より効果が上がるはずです。

さらに、小まめに手を洗うことで、接触感染のリスクを引き下げれば、マスクを装着することによる感染予防効果はより高まる、と言えます。

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