コラム

これまで、COVID-19の感染経路は飛沫感染と接触感染だとされてきました。ところが、最近になって、世界保健機関(WHO)などが「空気感染する」と言い出しています。新たな可能性によってなにがどう変わるのでしょう?

■新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は空気感染するらしい

SARS-CoV-2が世界的な問題となってすでに半年あまりが過ぎましたが、ウイルスの性質についてはまだまだわからないことが多く、いまだに日々、新たな発見が相次いでいます。

感染経路についてはこれまで、接触感染もしくは飛沫感染とされており、空気感染はしないというのが定説でした。

病原体の中でも、空気感染するものは少なく、風邪を引き起こすウイルスやインフルエンザウイルスなど、SARS-CoV-2に性質が似ているウイルスも空気感染はしない、とされているため、そう考えられてきたようです。

ところが、7月に入って日本を含む複数の国の研究者が「COVID-19の空中感染に取り組む時がきた(It is Time to Address Airborne Transmission of COVID-19)」という声明を発表。WHOもそれに追随する形で、事実上、空気感染のリスクを認める情報発信を行っています。

ここにきて、接触感染、飛沫感染に次ぐ第三の感染ルートとして、空気感染についても対応を考える必要が出てきたのです。

■する? しない? 専門家も右往左往

SARS-CoV-2が空気感染するのかどうかについては、専門家の意見も混乱をきたしています。政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は「空気感染はしない」という主張を変えない一方、「マイクロ飛沫感染」という新たな感染ルートが世界的に注目されている、と主張。

ただ、この「マイクロ飛沫感染」という言葉は医学の世界でも一般的ではないため、「定義がわかりにくい」「空気感染とどう違うのか?」などと訝しむ声も医学界にはあります。

そもそも、「3密を避けるべし」という感染対策そのものが、空気感染を前提にしているように見えることもあり、一般市民にとっては議論の焦点がどこにあるのかすらわかりにくい事態となっています。

■飛沫感染と空気感染はどう違う?

そもそも、空気感染と飛沫感染はどう違うのでしょう? 一般的に飛沫とは咳やくしゃみ、大声の会話などにともなって飛び散る体液の小さな滴を指します。

一般的な定義では飛沫の大きさは5㎛以上とされています。くしゃみや咳の際には1~2メートル程度飛び散ると言われますが、重力によりやがては床などに落下します。

感染者が放出する飛沫には細菌やウイルスなどの病原体が含まれていることがあり、それを別の人が吸い込むことで感染が広がるのが飛沫感染です。

一方、空気感染を引き起こすのは飛沫が乾燥してできる、さらに小さな粒子です。こちらは非常に軽いので、空中に舞い上がり漂い続けます。この病原体をを含む粒子を吸入することで感染が広がるのが空気感染です。

空気感染を起こすためには乾燥しても感染力を失わないことや、少量で感染を引き起こす強い感染力が必要なので、飛沫感染する病原体に比べ、空気感染する病原体はかなり少数派です。麻しん(はしか)や水痘(水ぼうそう)、結核など、ごく限られた病原体だけ、とされています。

■空気感染を見据えたwithコロナの暮らし方

空気感染を前提に考える場合も、SARS-CoV-2対策の基本は今までとほとんど変わりません。密を避け換気を行うことの意味がより明確化されたと言えるので、その点については今まで以上の配慮がしやすくなるはずです。

考え方が大きく変わることがあるとすれば、マスクの効果でしょう。マスクにはこれまで、「装着することで飛沫の吸い込みをある程度防ぎ、感染症を予防する」という効果があると考えられてきました。

また、感染している人が装着すれば、「飛沫の拡散を防いで、感染の拡大防止につながる」とも言われています。

しかしながら、医療用の高機能マスクを除くと、ほとんどのマスクには空気感染を防ぐ機能はありません。

感染者が装着することで、飛沫の拡散は防げますが、それでもマスクを装着する前に衣類や頭髪などに着いたウイルスが空中に舞い上がれば、同じ部屋にいる人たちに感染が広がることもあり得ます。

「マスクをしているから感染しにくい・感染させにくい」という事実は変わりませんが、マスクをしていても一定の感染リスクは存在することを理解しておいた方がいいでしょう。

猛暑の季節を迎えて装着する人が増えているフェイスシールドの効果については、その効果について、再考する必要がありそうです。

■まとめ

withコロナの世界で安全に暮らすためにはリスク情報を常に更新して、新たな対策を講じることが大切です。発表されているデータを見る限りでは、空気感染はあり得ると思った方がいいでしょう。

しばらくは、命に関わる高温の時期が続くだけに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と熱中症、冷房と換気のバランスをどうとるか、状況に合わせて、細かな配慮が求められます。

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