コラム

今年ももうすぐ猛暑の季節。国内ではすでに、最高気温35℃以上の猛暑日となった地域も見られています。

暑くなってくると美味しいのがビールです。新型コロナウイルス感染症のせいで、なかなか集まって飲む機会を作るのは難しい状況ですが、「ストレス解消に家で冷たいビールを」という人は多いはず。

ただ、アルコールの摂取は健康に影響します。今回はそんな飲酒と健康の関係について紹介していきます。

長く信奉されてきた「百薬の長」

古くからお酒は「百薬の長」と呼ばれてきました。飲み過ぎると身体に悪いのはもちろんですが、適量であれば健康増進に役立つと考えられてきたのです。実際、アルコールには健康状態の改善に役立つ効果がいくつもあります。

①ストレスの軽減

お酒を飲むと脳内でエンドルフィンと呼ばれる快楽物質が放出されるため、多くの人は開放的な気分になり、社交的になります。社会とのつながりが強化されることで、ストレスが軽減されるので、心身のさまざまな病気を予防するのに役立ちます。

②血管拡張

アルコールには末梢の血管を拡張するはたらきがあります。そのため、適度にお酒を飲む人は循環器系の病気のリスクが低い、とされています。

③HDL(善玉コレステロール)の増大

HDLコレステロールには血管内の余分なコレステロールを回収して肝臓に戻すはたらきがあるため、「善玉コレステロール」とも呼ばれます。アルコールを摂取することで、このHDLが増えるので、適度な飲酒は動脈硬化の予防につながるとされています。

このように、健康を増進するお酒の効果は「お酒が大好き!」という人にとって心強い説でもあるので、「禁酒するより適量を飲む方が健康にいい」という説は長く信奉されてきました。

厚生労働省の健康情報発信サイト「e-ヘルスネット」でも、複数の研究結果を取り上げた上で「先進国の中年男女」についてはお酒を飲まない人よりも適量を飲む人の方が死亡率が低い、という情報を掲載しています。

一日の平均アルコール消費量と死亡率の関係(国外の14疫学研究のメタ分析)[4]

一日の平均アルコール消費量と死亡率の関係(国外の14疫学研究のメタ分析)[4]

※e-ヘルスネットより転載

世界で物議を醸した「飲酒に適量はない」説

ところが近年になって「お酒に適量はない」とする論文が登場し、物議を醸しています。ワシントン大学の研究チームが2018年8月に発表し、世界的な権威である医学誌「The Lancet」に掲載された論文では、「少量でもリスクがあるため飲酒量0がいちばん健康」と結論づけられました。

高血圧や脳出血、乳がん、肝硬変などの病気についてはお酒を飲まない人のリスクがもっとも低いことがわかっており、そういった疾患のリスクが高い人は少量でも飲まない方がよいと言えます。

ただし、ワシントン大学の研究チームが発表した論文については「お酒を飲まない人のデータを含んでいない部分がある」など、データの利用に不備があるとして、反論する専門家もおり、評価が分かれています。

「少量でも飲むと健康リスクがある人」と「適量の飲酒なら健康リスクを抑えられる人」がいる、と考えるのが正解だと思われます。

コロナ対策にも? 飲酒で殺菌・免疫力は本当か?

飲酒と健康の関係で気になるのが新型コロナウイルス感染症との関係です。国内外で「お酒を飲むとアルコールで殺菌できる」「免疫力がアップする」といった情報が拡散された時期がありました。

これらについてはWHOがいずれの情報も事実に反すると発表しています。ウイルスをアルコールで除去するためには60%以上という濃度が必要であり、飲酒によって体内でそんな濃度を実現するのは不可能です。

免疫力についてはストレスの解消によりアップすることがあり得ますが、飲み過ぎれば身体に大きな負担がかかるため、免疫力の低下につながります。

ただし、一般的な風邪については、「お酒をよく飲む人ほどかぜを引きにくい」という興味深い結果も報告されています。国内外に複数の研究結果がありますが、たとえば東北大学が仙台市が実施する健康診断を受けた男性899人を対象に行ったコホート調査では、お酒を飲む頻度が多いほど、年に2回以上風邪を引く割合が低いことが分かっています。

なぜ、お酒に風邪を予防する効果があるのかは不明ですが、「ストレスを低減できるから」「血管が拡張することで体温が上昇するから」など、いくつかの原因があるものと考えられます。

もちろん、この結果が新型コロナウイルス感染症にも適用できるかどうかは不明なので、「お酒でコロナを予防できる」と考えるのは危険です。

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