呼吸は私たちが生きていく上で欠かせない活動です。1日あたり3万回も間断なく繰り返しており、5分程度途切れるだけで命を失います。いわば、生命活動の基本と言える活動なので、やり方によって健康には大きな影響が現れます。

この記事では呼吸を見直すことで、健康を改善する方法を紹介します。

◆呼吸はエネルギー産生を支えるガス交換

私たちが活動するためにはATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるエネルギーのもとが必要です。ATPなしでは、歩いたり走ったりといった運動はもちろん、ものを考えたり心臓を動かし続けたりすることもできません。

そんな生きる上で不可欠なATPの原材料となるのが、体外から食事により取り入れた栄養素と呼吸により取り入れた酸素です。

呼吸という言葉は「呼(息を吐くこと)」と「吸(息を吸うこと)」により成り立っています。呼吸とは酸素を取り込むと同時に、エネルギー代謝によって発生した二酸化炭素を排出するガス交換のことなのです。

◆「悪い呼吸」はいろいろな病気につながる

呼吸を意識して行うシーンは日常、あまり多くありません。たいていは無意識のうちに呼吸をしていますが、そのやり方には良し悪しがあります。健康につながる質のよい呼吸と病気につながる質の悪い呼吸があるのです。

質の悪い呼吸は浅く速い呼吸で、いわゆる「口呼吸」になっていることが少なくありません。そういった悪い呼吸を続けると、身体の各部が酸素不足に陥ります。特に、脳は大量の酸素を必要とする臓器なので、呼吸のやり方が悪いと、集中力が続かなかったり、眠気を感じたりするようになります。その他、消化器系や循環器系の機能低下をきたすようになり、さまざまな内臓系の疾患のリスクが高まります。

口呼吸はさらに、感染症のリスク増大にもつながります。鼻と違って吸気の湿気を保ちにくいので、喉や気管が乾燥しやすくなり、体外から侵入した細菌やウイルスをうまく排出できなくなるためです。

心身の状態をコントロールする自律神経系に対しても、悪い呼吸は好ましくない影響を与えます。速く浅い呼吸は「闘争と逃走の神経」と呼ばれる交感神経を活性化するため、心身は緊張状態に陥ります。

心身を非常時に適応しやすい状態にするのが交感神経の役割なので、血圧や心拍数は上昇、消化管や皮膚への血流量は減少します。その状態が続くと、高血圧や胃潰瘍などさまざまな疾患を発症しやすくなります。

◆体性神経により自律神経を整える

呼吸によるガス交換は肺をふくらませたりしぼませたりすることで行われます。肺には筋肉がないため、肋骨につながる筋肉や横隔膜のはたらきにより、肺の容積を変化させて、息を吐いたり吸ったりするのです。

そんな呼吸運動は二つの神経系によってコントロールされています。通常、無意識に呼吸しているときは自律神経、意識して深呼吸をする際などには意思によって身体の動きをコントロールする体性神経がはたらきます。

通常、自律神経の支配下にある活動を意識でコントロールするのは不可能です。心臓の鼓動や腸の蠕動を意図的に速めたり遅くしたりすることはできません。

呼吸はそれが可能なので、深さやリズムを意識することで、自律神経に影響を与えられます。意識して「落ち着いているときの呼吸」をする工夫により、心身をリラックスさせられるのです。

この作用を利用しているのがヨガや太極拳、瞑想など東洋独特の健康法です。いずれも、自律神経を整え、さらにその先にある安定した精神状態の確立を目標とする取り組みです。

心身を一体と見なして健康を改善する手法であり、東洋医学の基本と言えます。

◆ストローでトレーニング 正しい呼吸は腹式で深くゆっくり

悪い呼吸が浅く速いのに対し、正しい呼吸は深くゆっくり行います。自律神経にはたらきかけて副交感神経優位の状態を作り出すのが、健康につながる正しい呼吸です。

深く、しっかり呼吸するためには胸だけでなく、お腹をふくらませるやり方――いわゆる腹式呼吸を心がけるのがコツです。

また、呼吸のうち息を吸う際は交感神経、吐く際に副交感神経がはたらくので、なるべくゆっくり、息を吐きます。息を吸うときは鼻からが基本ですが、吐くときは鼻からでも口からでもかまいません。

呼吸筋を鍛えたいときにはストローをくわえて息を吐くやり方もあります。鼻から息を吸い、吐くときにはストローから呼気を出します。細いストローから息を吐くと呼吸筋に負荷がかかるので、深い呼吸をするトレーニングになるのです。

正しい呼吸を心がけ呼吸筋を鍛えることで、自律神経が整えられると共に、最大酸素摂取量が増え、より高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

◆まとめ

呼吸を意識するのに、特別大きなコストや手間はかかりません。インターネット上を探せばいろいろなやり方が紹介されているので、自分に合いそうなものを選んで、トライしてみるのがオススメです。

たとえば、NHK番組「ためしてガッテン!」で紹介された肺ストレッチなどは、情報の信頼性が高く、やってみるのも簡単なので、試してみてはいかがでしょう?

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