できるだけ長く自力で食事を楽しむために必要なこと

Medical Life Science Laboratory

生活の基本を「衣食住」と呼ぶことでもわかる通り、「食」は人が生きる上で欠かせない営為です。美味しいと感じるものを楽しく食べることは人の幸福の原点であり、健康であるための大きな条件と言えます。

そんな大切な「食」ですが、高齢になりさまざまな障害を抱えるようになると、好きなものを自力で食べることが難しくなります。できるだけ長く「食」を楽しむためには、日頃からの備えが大切なのです。

■年齢と共に低下する「食べる能力」

いわゆるサ高住や特養など、高齢者が暮らす施設を訪れると、「食」を巡る環境に愕然とさせられることがあります。「普通の食事」をとっている人もいますが、柔らかくマッシュしたものやゼリー状に加工したものを食べている人が多く、味や見た目を楽しむ様子は見られません。

元気なときは意識しませんが、自力でものを食べる際、人はさまざまな能力を駆使します。適切な量の食べ物を口に入れる能力、口に入れたものを咀嚼する能力、気管ではなく食道に送り込んで嚥下する能力……こういった能力が正しく連携することで、喉を詰まらせたりむせたりすることなく、食事を楽しむことができるのです。

ところが、多くの能力と同じく、こういった能力は年齢と共に低下します。脳卒中などによる、脳の障害が原因になるケースはよく知られていますが、がんや肺炎など、大きな病気がきっかけで、自力で食べる能力が大幅に低下するケースも少なくありません。

そうなると、いわゆる「ソフト食」や「ゼリー食」しか食べられなくなってしまったり、胃瘻を設けたりすることになり、食べる楽しみは失われてしまいます。

■カギを握るのは食べる能力を維持する工夫

年齢と共にあらゆる能力が衰えていくのは自然の摂理なので、ある程度は受容する必要があります。誰しも歳を重ねると、20歳のときと同じく、バリバリはたらき続けたり、モリモリ食べたりするのは難しくなっていきます。

ただし、多くの能力と同じく、食べる能力も努力により維持することができます。維持につながるもっとも基本的な方策は健康状態を保つことです。節制により生活習慣病を避けることで、がんや心疾患、脳卒中などの大きな病気を予防できます。

さらにもう一つ、食べる能力を維持するためには「誤嚥」を避けることも重要です。誤嚥性肺炎は2019年の統計で死因の6位にランクされており、高齢者にとって健康上の大きな脅威となっています。

幸いにして死にいたらない場合にも、罹患すると大きなダメージを受けるため、その後は自力で食事をとれなくなってしまう人が少なくありません。

誤嚥性肺炎を防ぐ方法として一般によく知られているものに、食前の「体操」があります。食事の際に使う口や舌が適切に動くよう訓練をすることで、食べる能力を維持し、誤嚥を予防できます。

やり方はいろいろありますが、下記のサイトでは近畿大学の専門家が動画で解説しているので、気になる方は試してみてください。

■食べられなくなっても諦めない

高齢で健康状態が悪化し、いったん食べる能力を失ってしまうと、「もう自力で食べるのは無理」と諦めてしまう人が大半です。実は医師の中にも早々と「この患者は自力での食事は不可能」と判断する人が多く見られます。

たとえば、誤嚥性肺炎で救急搬送され入院した患者の場合、治療を担当した病院に入院できる期間は2週間までです。その間に自力で食事がとれるレベルに回復しなければ、医師は待ってくれません。

患者本人や家族に対して胃瘻(胃に直接栄養を送り込めるようにする外科的処置)を提案するのが一般的です。医師にそう提案されたら、患者や家族が他の選択をするのはほとんど不可能です。

胃瘻を設けた患者は自力での食事を諦めてしまいます。1か月あるいは3か月といった単位で体力の回復を待ってリハビリを施せば、自力で食事をとれるようになった患者が、食の楽しみを失ってしまうのです。

そういった問題を回避するためには、患者の側もある程度の知識を持ち、医師の側に提案する必要があります。本当に食べる能力がないのか、検査する方法もあるので、体力の回復を待って、そういった検査を受けてみることをおすすめします。

■まとめ

自力で好きなものを食べる楽しみは、人生において非常に大きなものですが、元気なときにはなかなか意識できません。そのため、失って初めてわかるケースが大半です。小さな努力で維持できるので、「食」の重要性を今一度、確認してみてください。

 

No Comments

Add your comment

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。