運動が脳のはたらきに影響することはよく知られています。ただ、効果を実感するためにはある程度以上の頻度で行う必要があるため、忙しいビジネスマンには悩ましいところ。
だったら、HIITを始めてみませんか? 1日数分の運動で記憶力などの脳機能をUPできると言われるHIITについて、この記事では詳しく解説していきます。
■注目の運動法HIITってなんだ?
HIITは「High-Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)の略で、その名の通り、休憩をはさんできつめの運動をくり返すトレーニング方法です。
たとえば、HIITの一つとして有名なタバタ式では非常に負荷の大きい運動を20秒行った後、10秒の休憩をはさむ、というセットを6~8回くり返します。
8セットを完了するのに4分しかかからないため、忙しいビジネスマンにピッタリのトレーニング方法と言えます。
心身のパフォーマンスアップを目的に行われるトレーニングにはウォーキングやジョギングなどの有酸素運動と筋トレに代表される無酸素運動があります。
HIITは無酸素運動と短い休憩を組み合わせた運動のやり方ですが、他の運動に比べて、脂肪燃焼効果や脳機能の向上効果が高いことが、最近の研究で明らかになっています。
■脳の神経細胞がどんどん増える
脳の機能は神経細胞の数に影響されます。一昔前まで、脳の神経細胞の数は増えない、とされていましたが、最近では大人になってからも増えることがわかっています。記憶や思考といった脳のはたらきを強化するためには神経細胞を増やすことが有効です。
神経細胞の新たな発生には、いくつもの物質が関わっています。たとえば、FNDC5(フィブロネクチン3型ドメイン含有蛋白質5)は神経細胞を増やす因子の一つです。
運動により筋肉から放出されたFNDC5は脳内で記憶を司る部位――海馬で「脳由来神経栄養因子」であるBDNFを増やすことがわかっています。
BNDFは「脳にとって奇跡的な効果をもたらす肥料」とも言われる物質であり、これが増えると、脳の神経細胞が効率的に増加します。
■ミトコンドリアの質と量を改善
脳は体内でも屈指の「大食い」です。活動するために大量のエネルギーを必要とするので、高いパフォーマンスを維持するためには常に、効率よくATPを作り続ける必要があります。
ATPを産生するのは細胞の中にあるミトコンドリアです。すなわち、ミトコンドリアを増やせれば、ATPの産生量が増え、それを使って活動する脳の活動量をアップできるのです。
ミトコンドリアの数は細胞が置かれている状況によってバランスよくコントロールされています。細胞増殖を促す因子や栄養、酸素、インスリンなどの状態により、増えたり減ったりするのです。
このはたらきはとても複雑で、ミトコンドリアが増えるのを抑えるたんぱく質やそれとは反対にミトコンドリアをどんどん新しく作るよう細胞にはたらきかけるたんぱく質などが関係しています。
HIITを続けると、この仕組みに働きかけて、ミトコンドリアを増やすことができます。細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアが増えれば、ATPを大量に作れるようになります。
ATPを一番必要とする脳がパワーアップするので、仕事の成果がどんどん上がる……かもしれません。
■週に3回以上 強度は自分に合わせて選ぶ
HIITの基本は限界近くまで身体を追い込むことです。負荷の大きな運動が必要ですが、同じ運動でも、人によって感じ方には差があります。
スポーツの経験や普段の運動量などによって、適切な運動の強度は違うので、自身の身体と相談しながらトレーニングの種類や負荷、時間などを選ぶことが大切です。
トレーニングのやり方や種類についてはYouTubeが参考になります。「HIIT」で検索すれば、たくさんの動画が見つかるので、目的や体力に合いそうなものを試してみてください。
HIITを行う頻度は最低でも週に3回が目安です。週5回と3回では効果にあまり差がない、という研究結果もあるので、それ以上やる必要はあまりないかもしれません。
■まとめ
効果的なトレーニング方法を探す科学的な研究は今も続けられており、新しい成果が次々に発表されています。HIITについては、最新の研究でかなり驚くべき効果が確認されているので、パフォーマンスアップの方法を探している人にとっては、試してみる価値が大きいトレーニング方法だと思います。