コラム

暮らしの中にすっかり根付いた感があるSNSですが、その影響についてはまだ、さまざまな面からの検証が行われている段階と言えます。

長時間利用する若年層は精神的な問題を抱えている割合が高い、という報告や利用を中止すると幸福感がアップする、という報告があり、心身の健康を考える上では、慎重に接する必要がありそうです。

■急拡大! 国内の利用者数は8000万人に

諸説がありますが、国内でTwitterやFacebookの利用者が増え始めたのは2010年ごろとされています。その後、LINEやInstagram、YouTubeなど、さまざまなSNSを愛用する人が若年層を中心に急増してきました。

株式会社 ICT総研が発表したデータによると、2020年末における国内のSNS利用者は7,975万人(普及率80%)になるそうです。主たる利用者はもともと若年層に偏っていましたが、最近では中高年層の利用者も増加しており、今やSNSはインフラの1つと言える状況です。

実際、大きな災害時にはSNSで状況を確認したり、救助を要請したり、といった使われ方をするケースが見られるなど、暮らしを支えるツールの1つとして、浸透し始めています。

■若年層では不安や抑うつ、孤独感と関係

そんな利便性の高いSNSですが、利用方法によっては人の精神に悪影響をおよぼすことがわかってきました。

米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究者らが12~15歳の青少年を対象に行った調査では、SNSの利用者はまったく利用しない人に比べて不安や抑うつ、孤独感などの問題を抱える可能性が高いことが示されました。

1日に6時間以上SNSを利用する若者では3倍、3~6時間なら2.5倍、30~3時間でも2倍と、いずれもかなり大きな差が見られています。利用時間が長いほど、精神的な健康度合いが低くなることが判明したのです。

ただし、この結果だけでは「卵が先か鶏が先か」を決めるのは困難です。SNS利用により精神的な問題を抱えやすくなるのか、精神的な問題を抱える人がSNSにはまるのか、わからないためです。

■Facebookをやめると幸福感がアップする

前述の「卵が先か鶏が先か」論争に終止符を打ってくれそうな研究成果をデンマークのコペンハーゲン大学が2015年に発表しています。

同研究所では男女1095人を2つのグループに分け、一方のグループにはFacebookの利用を1週間にわたって中止させる、という実験を行いました。その結果、判明したのは利用を中止したグループの方が精神的な状態がよくなるという事実です。

この研究では実験の前後に「幸福感」など、心の状態を示す項目についてアンケート調査を実施。実験前には両グループのスコアはほぼ同じでしたが、実験後にはかなり大きな違いが見られています。

たとえば、人生の満足度を10点満点で評価させたところ、Facebookの利用を続けたグループの平均が7.74だったのに対し、利用を中止したグループでは8.11でした。

Facebookの利用が人生の満足度につながるのは閲覧や投稿により「嫉妬心」がかき立てられるため、と考えられます。人がSNSに投稿するのは一般的に自身が大きな幸福を感じた出来事やシーンです。

それを見ることで、友人や知人は自分よりも幸せに暮らしている、あるいは優秀である、などと感じると、多くの人は劣等感や自己否定の感情に苦しむことになるのです。

■SNSが健康増進に役立つことも

もちろん、SNSによい面がないわけではありません。健康についての影響で言えば、情報の交換やモチベーションの維持といった面では大きな利点があります。

たとえば、疾病を抱える人が疾病に関連する情報や人とのつながりを求めているケースは少なくありません。そんなニーズを持つ人にとって、SNSは利便性の高いコミュニティと言えます。

最近ではがん患者や家族が集まるSNSや糖尿病患者向けのSNSなど、利用者や利用目的を限定したものも登場しており、それぞれが持っている情報を交換したり、治療に対するモチベーションを維持したりする場として活用されています。

■まとめ

SNSは他人とのつながりを爆発的に拡大できるツールです。まだ登場して日が浅いだけに、適切な利用法や付き合い方が確立されておらず、特に自我がまだ定まっていない若年層については精神にマイナスの影響をおよぼすリスクがあることを理解しておく必要がありそうです。

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