コラム

先日、実家の母から奇妙な話を聞きました。隣家の住人が「コロナは風邪と同じだから、うちは一家そろってワクチンなど打たない」と言っているというのです。

「コロナ=風邪」はインターネット上などでしばしば見かける説ですが、本当のところはどうなのか? この記事では統計を元に解説します。

■根強い「コロナは風邪と同じ」説

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行を始めた当初から、「ただの風邪と同じ」という説を唱える人がいました。中には、トランプ前大統領や実業家の堀江貴文氏など、強い影響力を持つ人もいたため、一時はこの考え方がかなり広く支持されたこともあります。

現在でも、「ただの風邪説」を信奉する人は根強く残っており、「たいしたことないのにマスコミがあおりすぎ」「ワクチンで大もうけしたい製薬会社や医療業界が誤情報を流しているだけ」などと、陰謀説を唱える人も見られます。

もちろん、何を信じるかは個人の自由です。ただ、COVID-19の危険性を低く見積もると感染拡大につながる恐れがあるため、注意が必要です。「ただの風邪説」を信奉する人の中には公共の場におけるマスクの着用を拒否したり、ワクチン接種を見送ったりする人もいます。

社会全体のリスクを意味なく増大しないためには、COVID-19について正しい情報を共有する必要があります。

■例年111万人のインフルエンザ患者が1000人に激減

COVID-19がただの風邪かどうかは統計を見れば明白なので、2020~2021年の患者数と死亡者数をインフルエンザと比較してみましょう。

厳密に言うと、インフルエンザは風邪ではありませんが、感染ルートや症状が風邪と類似しており、風邪よりも感染力や死亡率が高いので、比較対象としては適切だと考えます。

インフルエンザについては厚生労働省が患者数を集計して発表しています。それによると、2020年8月31日~2021年2月14日の感染者数は1011人。直近5シーズンの平均は111万人ですから、今期は1/1000以下に激減したことがわかります。

減った理由はCOVID-19対策です。マスクの着用、消毒・手洗いの徹底、三密の回避、緊急事態宣言といったCOVID-19対策がそのまま、インフルエンザの感染予防に有効だったのです。

この間、国内で発生したCOVID-19感染者は約35万人にのぼります。同じ感染予防対策下で、COVID-19患者は350倍も発生したのです。この数字はそのまま、感染力の違いを示すものと言えます。

死亡者数の違いはさらに顕著です。インフルエンザの死亡率は0.1%程度とされているので、今期の死者数は1人程度と推測できます。

一方、同一期間中にCOVID-19により死亡した人は約5700人。COVID-19における人口あたりの死亡率はインフルエンザの5700倍も高いのです。

■必要なのは科学的根拠に基づく判断

マスコミに対する信頼性が低下する中、インターネットを新たな情報ソースに選ぶ人が増えています。テレビや新聞といったメディアには経営的な判断もあるため、報じる情報に偏りがあるのは事実です。

とはいえ、マスメディアにとって信頼はもっとも重要な経営基盤なので、それを大きく損なう誤情報を流すのは自殺行為と言えます。

その点、YouTubeなどで間違った情報を流す人の多くは信頼性よりも注目度によって経済的な利益をあげています。バズれば儲かるので、正しいが地味な情報よりも間違っているが派手な情報を流す動機が強いのです。

「ただの風邪説」もこのセオリーに沿って広められた、と考えられます。マスメディアとは反対の説を唱えることで、耳目を集めたい人たちが意図的に流した情報なのです。

さまざまな情報が飛び交う中で、真実を見極めるのは容易ではありません。頼りになるのは科学的な考え方です。ソース元をたどって、統計等の数字をしっかり確かめることで、間違った情報を信じてしまうリスクを抑えられます。

誤情報が非常に多いCOVID-19について、何かを判断する時には特に、そういった努力が欠かせません。

■まとめ

科学は万能ではありませんが、科学的な考え方はすべての人が意見や思想を共有するための基盤になるものです。困難な時代だからこそ、科学を大切にする姿勢を守ることで、私たちは無用のトラブルを避けるべきではないでしょうか?

COVID-19はただの風邪ではありません。これまで多くの人が直面したことのない脅威だ、と意識した上で対応策を講じる必要があります。

Categories: