コラム

全国各地で熱中症によって救急搬送されたり死亡したりする人が急増しています。予防のために水分を摂るよう、推奨されていますが、正しいとり方をしないと、予防につながらなかったり、かえって健康を害したりすることがあるので、注意が必要です。

■コロナより危険? 東京では79人が死亡

8月に入り、国内では猛暑が続いています。全国的に最高気温の過去最高記録を更新する地域が連日報道されており、「これまで経験したことがない暑さ」に多くの人がさらされているのです。

さらに今年はマスクを着用していることが多いため、熱中症のリスクが非常に高まっています。東京都では8月18日までに79人が死亡。

一方、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による東京都内の死者は7月30日時点で330人。8月18日時点では334人なので、8月に入り、4人しか増えていないことになります。

現状ではCOVID-19に比べ、熱中症の方がはるかに危険度が高い、と言えそうです。

■熱中症予防には水分と○分が必須

そんな熱中症の予防策として有効なのはすでに報じられている通り、暑さを避けることと水分の摂取です。特に水分については喉がかわいたから飲む、というのではなく、意識的に飲むことを心がける必要があります。

人の身体には体温をコントロールするはたらきが備わっています。寒いときには体表面や手足の先など末端の血管を収縮することで、熱を逃がさないようにします。

逆に、体温が上昇すると、汗をかいて気化熱により身体を冷やそうとします。汗をかくことで水分が失われるため、その分を補給する必要があるのです。

ただし、水分が必要だからと水だけを飲んでも熱中症の対策には足りません。ときどき、「水をちゃんと飲んでいたのに熱中症になってしまった」という一見不思議な出来事が起きることがあります。

これは水分と一緒に塩分を摂らなかったから発生したトラブルです。舐めると塩辛いことでもわかる通り、汗には塩分(塩化ナトリウム)が含まれています。つまり、汗をかくと水分だけでなく塩分も体内から失われていくのです。

塩に含まれるナトリウムには心臓など重要な臓器がバランスよくはたらくようコントロールする作用があります。ですから、ある程度以上、汗をかいて塩分を失うと、人の身体はそれ以上塩分濃度が下がらないよう、飲んだ水分をどんどん排出するようになります。

汗を大量にかく状況で水分だけを補給しても、あっという間に出ていってしまうのです。その結果、熱中症になったり、意識障害が起きたりといったトラブルが発生してしまうので、予防するためには意識的に塩分を摂ることが欠かせません。

■飲む水の温度や塩分濃度はTPOで選ぶ

それでは、熱中症を予防するためにはいつどんな水を飲むのがいいのでしょう? タイミングについては、「水分を失いそうなときには前もって水分を補給しておく」というのが基本的です。

スポーツや屋外で活動するときはもちろん、就寝時も実は水分をかなり失うので、活動前や寝る前の水分補給は大切。さらには、朝の起床時にもその後の活動で水分が失われるので、就寝時に失った分以上の水分をしっかり摂ってください。

摂取する水分の温度や塩分濃度はタイミングによって変えるのがベストです。たとえば、スポーツや屋外活動では大量の汗をかきますし、体温が一気に上昇しがちなので、塩分をしっかり摂ることが大切です。

日本スポーツ協会では「0.1~0.2%の塩分を含むもの」を推奨していますが、スポーツドリンクなどはこの濃度に設定されているので、薄めずに飲む方がいい、とされています。

体温上昇を抑えるためには、活動前、活動中にはよく冷やしたものを飲む方がよいでしょう。

一方、就寝中に大量の汗をかくケースは少ないので、血圧等が気になる人はかかりつけの医師に相談して、塩分を控えるのもありです。

また、寝る前に冷たい水を飲むと、交感神経が刺激されて、寝付きが悪くなることが考えられるため、常温に近い水分を摂る方がよいでしょう。

■実は水分の摂りすぎにも注意が必要

熱中症予防のために水分の摂取はとても大切ですが、飲み過ぎるのも実は問題です。「水に毒性はないのだから、大量にとっても大丈夫」と思いがちです。

しかしながら、実際には「どんな物質も摂りすぎると毒になる」というのが正解。水も空気も、体内に取り入れすぎれば、健康を損なうことになります。

水の場合には先ほど説明した通り、ナトリウムなどの濃度バランスが崩れるので、一気に大量に飲むと、脳障害等を起こすことがあります。

一般には1日あたり1.5~2リットル程度の水分を摂るのがいいとされています。私が取材したことのある医師は「患者には500ミリリットルのペットボトルを3本用意して、水を入れ、1日で飲みきるよう指導している」と教えてくれました。

もちろん、これは一つの基準であり、適切な量は健康状態や環境、活動により異なります。心臓に問題を抱えている人が水分を摂り過ぎると、心臓に対する負担が大きくなりすぎることがあります。

暑いところにいる人、肉体労働や運動をする人の場合にはより多い水分が必要ですし、冷房が効いている部屋で、デスクワークをしているなら、それほど大量の水分は必要ありません。

1.5~2リットルをベースに、「どのくらいの量を飲めばいいのか」をそれぞれ、判断することが大切です。わかりにくい場合には、医師などに相談するのがおすすめです。

■まとめ

熱中症で死亡した人の大半は高齢者です。さらに言うと、屋内で発症するケースの方が多いので、「ハードワークしていないから」「猛暑の屋外にいるわけではないから」という油断は禁物です。

水分のとり方を含め、COVID-19対策以上の熱中症対策を一度しっかり、確認してみてください。

Categories: