コロナ死抑制か経済再生か 両立のカギが高齢者の基礎疾患対策である可能性

Medical Life Science Laboratory

60歳未満はほとんど死なないらしい――新型コロナウイルス感染症について、東京都が7月31日に発表したデータでは、そんな事実が浮き彫りになりました。

年齢がコロナ死の大きなリスクであることが示される中、経済再生とコロナ対策という相反する課題を両立させるためには、高齢者の暮らし方を変える必要がありそうです。

■統計で明らかになった年齢リスク

東京都が発表したデータによると、6月30日まで都内で確認された陽性者数は6225人、うち死亡した人は325人でした。

新型コロナウイルスに感染した人の5.2%が死亡したことになりますが、年齢別に集計したところ、高齢者と若年層では死亡率に大きな差があることがわかっています。

90歳代の死亡率は33.9%と非常に高く、80歳代も30.2%にのぼります。80歳以上に人が新型コロナウイルスに感染した場合は3人に1人が死亡するのです。

一方、50歳代以下の死亡率は非常に低く、0.5%程度となっています。感染者が1000人いるとしたら、亡くなるのはそのうちの5人だけ、という少なさです。

「高齢者は亡くなってしまうケースが多いが、若者はほとんど無症状もしくは軽症で終わる」と考えるのは危険とされていますが、少なくとも死亡率については年齢によって非常に大きな差があることは事実です。

■経済再生には年齢別の対応が有効だが

今回の統計が発表される以前から、「社会の中で高齢者を隔離すべきでは?」という案を検討する声はありました。実際に、イギリスでは3月の時点で高齢者に「自主隔離」を求める施策がとられています。

非常に大雑把な言い方になりますが、働いて経済を回さなければならない年齢層とリタイヤしている人が多い高齢者層を分け、後者には「自主隔離」を求めることで、経済活動を再開しやすくなるのは事実です。

今回の統計を見ると、高齢者の隔離は新型コロナウイルス感染症のリスクを抑えつつ経済を再生するのに適した策だと思われます。

後遺症等のリスクは多少あるものの、若年層にとって新型コロナウイルス感染症の死亡リスクはインフルエンザとそれほど変わりません。

少なくとも、年齢層別の対策を講じれば、高齢者のリスクを考慮しながら経済再生を図るよりも、大胆で効果の大きな経済刺激策をうてるはずです。

■高齢者は「自主隔離」せざるを得ないが

高齢者にとっては大きなリスクがあるとわかっている状況で、政府は経済再生に向けた施策を進めつつあります。

GoToトラベルといった人の移動を推奨する政策を打ち出せば、人の交流が盛んになり、外出先でウイルスを保持する人に接触する確率が高まるのは明白です。

しかしながら、国としてはこれ以上、経済を犠牲にはできない、という判断からあえて健康上のリスクについて、目をつぶって進めているのがGoToトラベルだと言えます。

古い歌のフレーズに「わかっちゃいるけどやめられない」というのがありましたが、まさにそんな感覚でしょう。

死亡者数がよほど急増しない限り、この政策を撤回するとは思えないので、高齢者が身の安全を図るためには「自主隔離」をする以外に道がないのが現状です。

ただし、自主隔離にも大きな弱点があります。一人で生活を賄える高齢者はよいのですが、そうでない場合にはどうしても、人との接触が生じること。

家族やヘルパーなど、経済活動のために外出する機会が多い若年層に生活を支えてもらっている人は自主隔離できません。

政府の施策には矛盾がある、とたびたび指摘されていますが、事実上は「高齢者がある程度死亡するのはいたしかたない」という認識のもとに、国の舵をとっている、と見るのが正しそうです。

■年齢リスクの正体は基礎疾患

そんな残酷とも言える環境下で、新型コロナウイルスのリスクを抑えて暮らすためにはどうすればよいのでしょう?

難解な問題を解くためのヒントになるのが「年齢リスクの正体」です。人の身体が持つ機能の多くは20代をピークとして、加齢とともに低下していきます。

そうして、身体機能の低下にともなって、さまざまな不具合を抱えやすくなることから、高齢者には基礎疾患を抱える人が多いのです。

基礎疾患が新型コロナウイルス感染症の重症化につながることは、以前から指摘されてきましたが、東京都が31日に発表した統計でも、死亡率との関係が示されています。

データによると、都が把握しているコロナ死亡者325人のうち、基礎疾患の有無が確認できた人は198人。その中で、基礎疾患がなかった人はなんと4人だけだったのです。

その他の194人には糖尿病や高血圧、腎臓病などの基礎疾患があったと報告されています。

前述のように、基礎疾患を有する人の割合は年齢層が高いほど増加します。

東京都のデータでも、70代以上の死亡者162人のうち、基礎疾患が確認できなかったのは2人だけでした。

このことから、新型コロナウイルスに感染した高齢者が命を落としてしまうのは、基礎疾患が大きな原因になっている、と考えることができそうです。

つまり、高齢者だから新型コロナウイルス感染症の死亡リスクが大きいのではなく、高齢の人は基礎疾患を持っている確率が高いため、感染が死につながることが多い、とも考えられるのです。

■基礎疾患対策でリスクをコントロール

コロナ禍を1日も早く終わらせられるよう、世界中で多くの人が努力を重ねています。しかしながら、期待が集まっているワクチンの開発について、WHOは有効なワクチンが見つからない可能性がある、というコメントを発表しました。

一方、経済の崩壊を防ぐためには「自粛」を今後も長く続けるのは不可能です。ワクチンがない中で、経済活動を従前のレベルに戻さなければならない時期が、すでに迫っています。多くの矛盾を抱えながらも、GoToキャンペーンが実施されたのはそのためです。

そんな環境下では一人一人が「自分で自分の命を守る」という意識を持つ必要があります。

国がすべての国民にとって最良の策をとるのは不可能です。最大多数の最大幸福が国家の目標ですから、少数派になってしまう人――新型コロナウイルス感染症で死亡する大きなリスクを抱えている人が命を守るには自己防衛の工夫が欠かせません。

その方法としてもっとも適切なのは基礎疾患対策でしょう。糖尿病や高血圧等の基礎疾患は生活習慣の見直しで、予防したり改善したりできます。

年齢を重ねるのは止められませんが、バランスのとれた食事や適切な運動、質のよい十分な睡眠といった事柄を意識して暮らすことで、心身をより健康な状態へと導くことができるのです。

■まとめ

年齢を重ねると、同じ歳でも健康状態には大きな差が生じます。遺伝的な要因も関係していますが、それ以上に大きいのが生活習慣の積み重ねです。

高齢者にとっても、いずれ高齢者になる人たちにとっても、3密を避けたりマスクを着用したりすることに加えて、基礎疾患の改善や予防につながる暮らし方が、これからは重要な対策の一つになる、と考えてよさそうです。

 

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