テレワーク急増で心配される健康上の問題と解決方法

Medical Life Science Laboratory

新型コロナウイルス感染症の拡大を予防するため、急速に増えているのがテレワークです。仕事のやり方が急変したことにより、健康上の問題を抱える人が増えていますが、多くの人が初めて直面する問題だけに、明確な解決策はまだ示されていません。

■急増で追いつかない環境の整備

国内ではこれまで、職場に出勤して業務をこなし、仕事が終わると帰宅する、という働き方が一般的でした。IT技術等の進歩により、実際には出勤する必要性が薄い人も、「とりあえず会社に行くのが当たり前」という社会常識に長く縛られてきたのです。

1990年代から政府の主導でテレワークを推進する動きはありましたが、企業や経営者の反応は鈍く、近年までなかなか普及が進みませんでした。

パーソル総合研究所(東京・千代田)が行った調査によると、緊急事態宣言以前の2020年3月9日~15日時点でテレワークを行っている人は13.2%にとどまっています。

そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、緊急事態宣言以降はテレワークを採用する人が急速に増えました。4月10~12日のテレワーク実施者は27.9%となっており、たった1か月で2倍に増えたことがわかっています。

仕事環境の整備には通常、一定の時間がかかります。管理や評価の体制を整えたり、働く環境を準備するためには細かな配慮が必要であり、最適な体制ができあがるまでには試行錯誤も生じるためです。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、とりあえずテレワークの導入に走った職場が多かったことから、心身の健康を含むさまざまな問題が発生しつつあります。

■環境の不備で増える疲れ目や腰痛等

在宅で働く人の多くはパソコンを使うデスクワーカーです。デスクについてコンピューターの画面を見つめ、キーボードを打つ時間が長いので、机や椅子、パソコンのモニター、キーボードといった備品の質は健康に影響します。

普段はパソコンやデスクを趣味や調べ物に利用するだけ、という人がコストをかけて品質が高く、体格に合うものをそろえるケースは少ないでしょう。そのため、仕事で長時間利用するようになると、さまざまな問題が発生しがちです。

たとえば、ある程度グレードの高いモニターには目の負担になるブルーライトを低減する機能がついています。椅子や机の高さを調節できれば、腰や背中、肩に掛かる負担を減らすことができます。

自宅の「仕事部屋」にそういった性能のある機器を導入できない人の多くは、同じ労働をこなした場合、肉体的により大きなダメージを負うことになります。

疲れ目やそれにともなう頭痛、肩こり、腰痛などがテレワークによって生じるリスクはかなり大きいと考えられます。

■在宅ワークでは運動不足の問題も

在宅で仕事をすることで生じる生活上のもっとも大きな違いは身体を動かす機会が大幅に減ることです。まず、通勤が不要になるので、駅まで、あるいは駅中での徒歩や電車内で立ち振動に負けないよう踏ん張る、といった運動をしなくなります。

通勤の運動量は意外に大きく、たとえば、体重60kgの人が徒歩15分、階段の上り下り3分、電車で60分立って通勤する場合のカロリー消費量は188キロカロリーにのぼります。

通勤だけでなく、働いている間にも多くの人はそれなりの運動をしています。階段を使っての上下階の移動やトイレ、社員食堂への移動など、デスクワークが主という人でも、外で働いている時にはそれなりに身体を動かしているものです。

ほとんどの場合、在宅ワークでは動線が大幅に短くなるため、そういった運動の量が激減してしまいます。

運動量が大幅に減ってしまうことは健康上のさまざまなリスクをもたらします。カロリー消費が減ることにより、肥満や糖尿病のリスクが増大しますし、血流が悪化することで、血管が劣化したり心臓や脳など重要な臓器の働きに悪い影響が生じたりすることも考えられます。

■在宅のストレスから精神的な問題も

テレワークは心の健康にも影響します。職場の体制が整えられていない中で導入された場合、社員を管理する立場の働き手は「サボっているのでは?」「仕事の品質が低下するのでは?」といった懸念を持つケースが少なくありません。

その結果、過度に厳しいルールを設けて社員のストレスを増大させてしまうことが懸念されています。管理される側も「仕事がちゃんと評価されるのだろうか?」という不安がを持つことが多く、そうなるとストレスはさらに増大します。

普段は家にいる時間が短い人が自宅にいるようになると、家族との関係によりストレスが生じることもあります。生活習慣の変化に家族もなかなか適応できず、諍いが起きるケースが増えており、家庭内暴力(DV)の増加が社会的な問題として報告されています。

■意識的に心身の健康を整える

心身の健康問題を軽減するためには意識的に対策を講じることが大切です。「テレワークは健康に悪いことがある」という危機感を持つことで、リスクを抑える工夫に積極的に取り組めるようになります。

運動不足については週ごとにプランを立てて、有酸素運動と無酸素運動を行うことが有効です。「毎日1時間程度歩く」「月曜日はスクワット、火曜日は腹筋運動……」というようにメニューを組むことで、効率よく運動不足を解消できます。

心の問題についてはさまざまなアプローチがありますが、基本となるのは「問題がある」という認識と「孤独感の解消」です。「問題がある」と考えることで、ストレスの軽減につながる行動を積極的に模索できます。

人により効果的な方法は異なりますが、家族や友人、地域の人たちとの絆を再構築することが、ストレスの軽減につながるケースは少なくありません。

■まとめ

発表されている統計を見ると、新型コロナウイルス感染症が重症化する割合はそれほど高くありません。むしろ、経済的な問題をはじめ、社会が急激に変化することで生じる問題の方がより深刻ではないか、と考えてみることも大切です。

テレワークがもたらす健康への悪影響もその一つですが、問題の本質がわかれば、軽減することはそれほど難しくありません。

 

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