コラム

「ワクチンを接種すると病気になる」といったフェイクニュースを拡散する動きが新型コロナウイルス感染症の広がりを受けて、活発化しつつあります。

アメリカでトランプ大統領がたびたびTweetしていることでも知られていますが、健康を守るためには正しい情報と間違っている情報の見極めが欠かせない時代となりました。

■ビル・ゲイツが国民にチップを埋め込む?

近年は新聞やテレビといったマスメディアだけでなく、多くの人がSNSを情報源とするようになりました。マスメディアが伝えない情報を教えてもらえることもあり、便利なのですが、根拠があいまいなうわさ話や意図的に作られたウソがあたかも真実のように語られていることもあり、注意が必要です。

特に、最近では新型コロナウイルス感染症という世界的な関心事が登場したこともあり、健康に関わるフェイクニュースが大量に流通するようになりました。

その一つにはたとえば、「Microsoft社の共同創設者であるビル・ゲイツ氏が新型コロナウイルスのワクチン接種に乗じてマイクロチップを人々に埋め込もうとしている」というものがあります。

荒唐無稽な情報に思えますが、アメリカで行われたアンケート調査では、共和党支持者の44%がこの情報を信じている、という驚きの結果が報告されました。

新型コロナウイルス感染症については他に、下記のようなフェイクニュースがSNSなどを通じて多数拡散しています。

・次亜塩素酸水を加湿器に入れて噴霧すると室内のウイルスを死滅させられる。

・花崗岩にウイルスを分解するはたらきがある。

・お湯を飲むと体内のウイルスを退治できる。

いずれも、根拠のない情報であり、効果は「不明」もしくは「まったくない」と考えるのが妥当でしょう。「これさえあれば大丈夫」などと信じて行動すれば、大きな健康被害につながってしまう危険性があります。

実際、次亜塩素酸水の噴霧については健康被害が発生しかねないため、WHOが「いかなる状況であっても推奨されない」と注意喚起をうながしているほどです。

■もともと医療や健康はフェイクニュースの宝庫

フェイクニュースを含む「うわさ」の流通量についてはアメリカの心理学者G.W.オルポートとL.ポストマンが下記のような公式を発表しています。

流通量=重要性×あいまいさ

健康は多くの人にとって重要性がとても高い事柄です。また、本来はあいまいであってはいけないのですが、医療に関する情報には理解するのが難しいものが多いこともあり、どうしても「健康にいいらしい」といったフワッとした情報だけが一人歩きしがちです。そのため、フェイクニュースの流通量がネット上では増えがちなのです。

さらに、近年は誰でも情報を発信できるSNSというツールが登場したことで、さまざまな意図を持つ人がわざとフェイクニュースを流すケースも急増しています。

たとえば、アメリカのトランプ大統領はこれまで「ワクチン接種のせいで自閉症の子供が増えている」とたびたびTweetしてきました。これはアメリカで大きな政治勢力である「反ワクチン団体」の支持を集めるためと言われています。

新聞やテレビを通じて「大統領発言」が紹介される場合には、反対の見解や専門家の見方などが付け加えられますが、Twitterでは情報が垂れ流しされてしまいます。

経済的な動機でフェイクニュースを流す人も少なくありません。「医師が処方する○○には死にいたるリスクがある」といった情報を流すと、多くの人の関心を引きつけることができるためです。

YouTubeで情報配信している人の中には、そういった活動をしている人が多く、中には語りが非常にうまく、カリスマ性がある人もいるので、非常に危険を感じます。

ちなみに、フェイクニュースの温床となってきた反ワクチン情報の多くは科学的論拠に欠けるものです。たとえば、トランプ大統領が言及する「ワクチンで自閉症」という情報はイギリスの医師であるアンドリュー・ウェイクフィールドが1998年に発表した論文に基づいています。

世界的な権威とされる「ランセット」に掲載されたことから、物議を醸しましたが、後に論拠となるデータのねつ造が発覚したため、「ランセット」もこの論文を撤回しました。

■健康につながるネット情報はソースを確認する必要がある

情報があふれている社会の中で健康を守るためには、正しい情報を見極めることが大切です。見極めを間違えると、死につながることすらあるからです。

今回の新型コロナウイルス感染症を巡っても、感染が広がったイランではアルコールによるうがいでウイルスを殺せるというデマが広がったことから、有毒のメチルアルコールを飲む人があとを絶たず、700人あまりの人が亡くなった、と報じられています。

今後も、「特効薬」や「ワクチン」について、さまざまな情報が登場すると思われます。これまでの経緯を見ると、中には健康被害につながるような怪しいものも数多く含まれている、と考えた方がよいでしょう。

雑多な情報から自身の健康を守るためには、情報の真偽を見極める必要があります。その際に役立つのはソースを確認して、「誰が」「なんの目的で」発信している情報なのかをチェックすることです。

Categories: