コラム

歳はとりたくないもの――多くの人がそう考えています。年齢を重ねることには、経験値の積み上げなどよい面もありますが、肉体的な劣化という大きなマイナスが伴うためです。

ただし、同い年であっても老化の度合いは人によって大きく異なります。最近では、老化の仕組みや老化を抑える方法が少しずつ解明されているので、暮らしの中に取り入れれば、老いを抑制できます。

今回はそんな老化抑制につながる方法の一つ、オートファジーの利用について解説します。

■85歳以上の6割が要介護 求められる健康寿命

誰でも優れた医療を安価で受けられるのが日本の誇る皆保険制度です。その恩恵を受けて、世界的な長寿国となっており、2021年には100歳以上の人口が8.7万人にのぼりました。

ただ、高齢者の増加は要介護者の増加につながります。厚生労働省・総務省が発表しているデータを見ると、80~84歳で27.0%、85歳以上では59.3%の人が要介護状態となっています(2020年時点)。

85歳を過ぎると、約6割の人が自力で生活を賄えない状態に陥ってしまうのです。「人生100年時代」と言われますが、身体の自由が利かず、家族等に負担をかける状態での長寿はむしろ「長呪」と感じる人も少なくありません。

幸福感の多い老後を送るためには、歳を重ねてもできるだけ心身の老化を抑える工夫が必要です。

■日本の研究が先導! オートファジーが老化抑制のカギ

老化に関する研究は世界中で進められています。人が老いる原因や老いを抑える方法について、日々、新たな知見が見つかりつつある中、大きな期待を集めているものにオートファジーがあります。

生物の細胞が自身を消化して再利用する仕組みのことで、2016年にはこのオートファジーの研究成果により、東京工業大学の大隈良典栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

人の細胞では常に古いパーツや不要な成分を新しいパーツ、必要な成分と入れ替える新陳代謝が行われています。そのために自己を分解する仕組みが細胞にはいくつか備わっており、その1つがオートファジーです。

新陳代謝の基礎となる身体のはたらきですが、この機能を高めることで、線虫の寿命が延び、高齢時の運動量が増えることがわかっています。

■不要な器官や成分、病原体は選択的に排除

オートファジーのプロセスは細胞内に袋状の組織が出来ることから始まります。分解する対象をその中に取り込んだこの袋はリソソームという器官に接合します。

リソソームにはタンパク質を分解する酵素が含まれているため、袋の中に取り込まれた物質はアミノ酸へと分解されます。こうして得られたアミノ酸は必要な組織に送られて、再利用されます。

このオートファジーには資源の再利用以外に、老廃物や病原体の排除、という役割もあります。たとえば、細胞内にはエネルギーの通貨と呼ばれるATPを産生する小器官――ミトコンドリアが含まれています。

人が活動するのに不可欠な小器官ですが、古くなると活性酸素を大量に産生して、細胞に害を与えるようになります。オートファジーが起きる際には、老化したミトコンドリアが選択的に取り込まれることがわかっています。

他にも、細胞内に侵入した細菌なども選択的に取り込むことがわかっており、人の健康を支える重要な仕組みと言えます。

■飢餓状態で活性化するので週末の○○が有効

オートファジーには大きく分けて基礎的オートファジーと誘導性オートファジーがあります。前者は常に体内で起きている活動です。それに対して、後者は細胞が飢餓状態――栄養や酸素が足りない状態に陥ったときに発動するものです。

簡単に言えば、通常モードの活動と非常時に発動する強い活動がある、ということです。したがって、後者を意図的に発動できれば、健康を支えるオートファジーをより強いものにできるのです。

具体的には「空腹」が誘導性オートファジーの発動に有効とされています。ただ、細胞に飢餓状態と感じさせるためには、ある程度長い時間、空腹を感じる必要があるため、16時間程度なにもカロリーになるものを摂取しない「プチ断食」がおすすめです。

水分は摂取しても大丈夫なので、それほど難しくありません。たとえば土曜日の夜8時に夕食を食べ、翌日は昼の12時まで白湯を飲むだけで過ごせば、16時間の断食が成立します。

週に1度程度で十分効果があると言われているので、トライしてみて体調の変化を確認してみるとよいでしょう。

■まとめ

断食は古くから効果の大きな健康法の1つといわれてきました。オートファジーの発動という面から考えると、健康状態の改善や維持に役立つのもうなずけます。

老化の抑制に加え、胃や腸など消化器系を休める効果もあるので、興味がある方は試してみてはいかがでしょう?

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