コラム

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が依然として注目されていますが、インフルエンザやノロウイルスなど、冬期になると毎年のように流行するウイルス感染症の対策も重要です。

いずれも遺伝情報をRNAとして持つタイプのウイルスであり、予防のカギを握るのは細胞の中にあるミトコンドリアです。

■免疫強化のカギはミトコンドリアだった

ミトコンドリアは細胞の中にある小器官です。人の活動を支えるエネルギー源――アデノシン三リン酸(ATP)の産生を担うことから「細胞のエネルギー工場」とも呼ばれます。

歩いたり、ものを考えたり、食べたりといった人の活動はすべてATPを使って行われます。免疫細胞が病原体を排除する際にもエネルギー源となるATPが必要です。ミトコンドリアが十分なATPを産生することで、免疫細胞はしっかり機能するのです。

免疫に対するミトコンドリアのはたらきはそれだけではありません。エネルギーを産生する際に発生する活性酸素を利用して、病原体を攻撃したり、病原体に感染した細胞を自死(アポトーシス)させたりするのもミトコンドリアの役割です。

ミトコンドリアは人の身体が病原体に負けないよう、「兵糧」を供給するのに加え、「司令官」としても機能しているのです。

■RNAウイルスに対する免疫反応をコントロール

ミトコンドリアにはRNAウイルスに特化した機能もあります。身体の状態に合わせて、RNAウイルスに対する免疫反応を調節しているのです。

このはたらきを担うのはミトコンドリアの表面膜上にあるMffタンパク質です。Mffタンパク質には細胞の栄養状態やミトコンドリアの活性レベルを検知するはたらきがあります。検知した情報に合わせて、ミトコンドリアは細胞の免疫応答を調節しているのです。

細胞の栄養状態が良好で、ATPが十分に産生されている時には、ミトコンドリアは免疫応答を促進させます。体力が十分にあり、免疫反応によって起きる炎症反応にも耐えうる場合には、優先的に病原体を排除するよう、指令を出すのです。

一方、細胞が栄養不良もしくはATPの産生が不十分な時には、ミトコンドリアは免疫反応を抑制します。炎症反応が活発化しすぎると、その負荷に細胞が耐えられなくなるからです。

この複雑な免疫反応の仕組みは2020年に大阪大学の研究チームが解明し、論文化しています。

■食事の工夫でミトコンドリアを活性化

栄養状態により、ミトコンドリアが免疫反応を調節しているとしたら、病原体の感染を予防し、重症化を防ぐためには、きちんと栄養をとる必要があります。

ミトコンドリアは通常、ブドウ糖を主な原材料としてATPを産生しています。ブドウ糖はもっとも効率よくATPを産生できる原材料なので、適切に摂取する必要があります。

一方、ミトコンドリアを活性化するのはケトン体です。こちらは肝臓が中性脂肪から作り出す物質であり、体内の糖質が足りなくなった時に産生されます。糖質をとらない時間帯を設けることで、ケトン体が産生されやすくなるのです。

したがって、「夕食には糖質をとらない」「夜8時以降はものを食べない」といった食事習慣を持つのが有効です。

「プチ断食」が身体にいいと言われるのは、ケトン体を産生してミトコンドリアを活性化できるためだと思われます。

■ちょいキツ HIITでミトコンドリアを増やせる

ミトコンドリアを活性化するもう一つの方法が運動です。意識的に身体に負荷をかけて、エネルギー不足の状態に導くと、人の身体は負荷に適応できるよう、ミトコンドリアを活性化したりミトコンドリアの数を増やしたりします。

ミトコンドリアに負荷をかける運動として有効なのがHIITです。「High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)」の略で、短い休憩をはさんで高負荷の運動をくり返す運動方法です。

運動中は大量のエネルギーを消費するので、ミトコンドリアに強い負荷がかかります。HIITについては脂肪燃焼や持久力アップの効果が広く知られていますが、ミトコンドリアの活性化についても大きな効果が期待できます。

■まとめ

まだまだコロナ禍が心配される中で寒さ厳しい季節を迎えるにあたり、免疫力を強化できれば、健康不安を抑えられます。

この記事で紹介したように、ミトコンドリアに注目して活性化すれば、免疫力を強化できるのに加え、ダイエット効果や体力の増進効果も期待できるので、冬が来る前にHIITにトライしてみませんか?

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