コラム

大阪を中心とする関西圏で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が急増しています。病床や人工呼吸器などの医療資源がひっ迫している自治体も多く、危機的な状況ですが、市民の反応は鈍く、このままでは医療崩壊は必至です。

この記事ではその原因と対策について解説していきます。

■重症者数が病床数を上回った大阪

これまで、どちらかと言えば首都圏の感染者数が注目されてきたCOVID-19ですが、ここにきて大阪府の新規感染者数(1日あたり)が東京都を大きく上回る日が続いています。

4月17日の新規感染者数は東京都が759人なのに対し、大阪府は1161人と約1.5倍の多さです。関西圏を構成する周辺の府県でも、同じくパンデミックと言える状況に陥っており、同日には兵庫県、徳島県で感染者数が過去最多を記録しました。

新規感染者数が急増しているのは感染力が強い変異株が広がりつつあるため、と考えられています。大阪ではイギリス型と呼ばれる変異株が多く検出されていますが、このタイプについては従来型に比べ、感染力が1.7倍強く、重症化率が1.6倍高い、とする報告があります。

イギリス型はまん延すれば医療に大きな負担となる特徴を備えており、実際、大阪では13日に重症患者数がすぐに利用できる重症患者用病床の数を上回る、という非常事態に陥っています。

■ファクターXが効かない? 日本が初めて直面する本物の危機

2020年にCOVID-19が世界中に広がる中、日本政府の対応は後手後手に回ったと言われました。中国からの旅行客を止めるのが遅れ、PCR検査数を増やせないなど、諸外国に比べて動きが鈍かったのは事実です。

ところが、そんな中でも感染者数がそれほど増えず、死亡者数もかなり少ない状況が続いてきました。対策に失敗したのに、感染はそれほど広がらなかったのです。

同様の成果は韓国や中国などの東アジアの特徴であり、研究者の間では感染爆発を抑える要因――ファクターXが存在する、と言われました。その正体についてはBCG説など、さまざまな可能性が示唆されましたが、最近ではIgA抗体が有力な候補となっています。

IgA抗体は人の鼻孔や咽喉、眼球などの粘膜に多く存在する抗体です。人体が外界と接する最前線で、感染を防ぐために機能するものなので、過去に接したことがある病原体とある程度似ているものには対応可能です。

単なる風邪症状を引き起こすだけのコロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、多くのウイルスは中国大陸で発生したり、変異したりしています。

これまで、さまざまなウイルスにさらされてきた東アジア地域の人が持つIgA抗体は、そういったウイルスにより「訓練」されてきたため、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2についても感染を防ぐ効果――交叉免疫を持っているのではないか、と考えられるのです。

ところが、変異株については関西での爆発的な広がり具合を見ると、この交叉免疫があまり効いていないように感じられます。これまで経験してきたコロナウイルスとは異なる部分が大きく、IgA抗体の効果が限定されている可能性があります。

■「まん延防止」にもかかわらず電車は満員

関西に住む筆者ですが、ライターという仕事柄、最近では人が密になる場所に出かけることはほとんどありません。電車に乗ることは非常に少なく、取材も昨年からはほとんどがZOOMになりました。

ところが、つい先日、まん延防止等重点措置がとられる中で取材の依頼がありました。依頼主は集客コンサルタントの会社でしたが、ZOOM取材を希望したにもかかわらず、「クライアントが対面で話をしたがっている」という理由で、希望は通りませんでした。

ZOOMは非常に便利なアイテムであり、取材の成果は対面で話をするのとほとんど変わりません。それをもとに書き上げる原稿の質はリアル取材とまったく同じなので、まさに不要な外出にあたります。

ただ、間に入っている集客コンサルタントにとって、クライアント企業の意向を拒否するのが難しいことは理解できるため、結局はリアル取材を受けざるを得ませんでした。

久しぶりに電車に乗って驚いたのですが、過去最多の患者数を記録しているにもかかわらず、車内はコロナ以前と同じく満員でした。昨年5月頃に発令された緊急事態宣言の際には、大幅に減っていたと言います。

夜の街の人出も今回の「まん延防止措置」では効果的に食い止められていません。終電に乗る機会が多い人に聞くと、やはりコロナ禍以前とあまり変わらない混み具合だそうです。多くの人が「コロナ慣れ」あるいは「自粛疲れ」してしまっているようです。

取材をリアルでと要求した企業も含め、もっとも真剣な感染防護が必要な時に、関西では市民の意識が大幅に低下しているのです。

■もう一度見直したい自粛の意味

COVID-19についてはさまざまな意見があると思われますが、医療が崩壊すれば、感染した患者だけでなく、重篤な病気の人や交通事故でケガをした人など、非常に多くの人が命を落とすことになります。

COVID-19がまん延した地域では、これまで当たり前のように受けてきた医療を受けられなくなるのです。ワクチン接種が遅れる中、それを食い止める方法は一人一人が意識して感染予防に努めることしかありません。

感染症については「私はかかってもかまわないから」という考え方は危険です。自身は重症化を免れても、誰かを傷つけたり死にいたらしめたりすることがあるためです。

その出勤は、飲食は必要か? 代替の手段はないのか? 働き方や余暇の過ごし方について、もう一度、緊張感を持って考え直す必要があります。

■まとめ

関西を中心に変異株の感染が広がる中、国内社会には「慣れ」や「疲れ」が見えます。「オオカミ少年」ではありませんが、これまでマスコミが熱を入れて報じるほどの問題を実感していない人が大半なので、「実はたいしたことないのでは?」という認識が広がっていることは否めません。

しかしながら、今回はどうやら本当にオオカミがやってきたようです。関西以外の地域では、これから本格化するものと思われるので、今一度、三密の回避等の対策をしっかり意識し直したいところです。

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