コラム

お漬け物にしょう油を一たらしすると、塩気と共に香りが加わり美味しさが増します。ただ、「健康のためには塩分を控えるべし」とする声があり、中高年では特に塩分制限に励む人も。

厚労省も塩分を控えるよう推奨していますが、実際に塩分を控えることで、人は健康になれるのでしょうか?

■厚労省推奨 6g/日でサイレントキラーを予防

塩分制限が健康にいいとされるのは主に高血圧を抑制できる、と考えられているためです。厚生労働省が発表しているデータによると、血圧が基準以上の人は国内に4300万人いるとされています。

国民の3人に1人が高血圧であり、抑制することでさまざまな疾患を予防できる、というのが厚労省の考えです。多くの場合、血圧が高めでも自覚症状はありません。

知らないうちに、高い圧を受け続けた血管が劣化し、ある時突然、心疾患や脳卒中といった命に関わる病気を発症することがあるため、高血圧症は「サイレントキラー」とも呼ばれます。

厚労省では国民の平均血圧を4mmHg引き下げられれば、冠動脈疾患による死亡を年間5000人、脳卒中による死亡を1万件減らせる、と発表しています。さらにその方法として、1日あたりの塩分摂取量を6g(小さじ1杯程度)以下にするよう、推奨しているのです。

■塩鮭、漬け物etc 日本食はもともと塩分多め

1日の塩分摂取量を小さじ1杯以下に抑えるのは容易ではありません。塩分摂取量は普段食べる料理に影響されます。日本食には梅干しや塩鮭など、塩分を多く含むものがもともと少なくありません。

また、インスタントラーメンなど、日常よく食べるものも塩分含有量が多いため、意識せずに食事をとると、あっという間に10gを超えてしまいます。

実際、厚労省が発表した「平成28年国民健康・栄養調査結果」によると、日本人の塩分摂取量は9.9g/日となっており、推奨されている量の1.5倍にのぼります。オーストラリア6.2g、フランス7.5gなどと比べて、かなり多めです。

ちなみに、世界保健機関(WHO)ではナトリウムの摂取量について2g/日を超えると摂りすぎ、としています。塩に換算すると約5gですが、この基準に照らすなら、日本はもちろんほとんどの国が塩を摂りすぎていることになります。

■塩分控えすぎで心疾患死増加も

健康の大敵として扱われている塩分ですが、人を含む生物が健康を維持するために必要な栄養素の一つでもあります。そのため、控えすぎるとさまざまな弊害が発生します。

塩分が不足すると、交感神経が活発化し、インスリンの抵抗性が増大、血清コレステロール値も高くなることが分かっています。いずれも、人の身体にとって負担になる作用です。

塩分不足の影響についてはさまざまな研究がなされており、たとえば、糖尿病患者の場合には塩分摂取量を減らすと死亡率が上昇する、という研究発表があります。

別の研究では、心疾患を持つ人においてもナトリウムの摂取量を大きく減らすと、死亡率が上昇する、と報告されており、塩分は少ないほどいい、とは言えないようです。

■とりあえずの目標は1日6g 

塩分摂取量と健康の関係については、これまで世界中で多様な研究が行われてきました。その結果、現状で言えるのは、多すぎてもダメだが少なすぎるのも問題、ということです。

厚生労働省やWHOの指針は「減らせば減らすほど健康にいい」と読めますが、実際にはそうではないようです。さまざまな研究からは、とりあえず厚生労働省が推奨する6g/日を目安に摂取し、それよりあまり多すぎず少なすぎない量を摂るのがとりあえずの正解と考えるのがよさそうです。

たとえば、お昼に牛丼と味噌汁を食べた場合、牛丼の並盛りは1.4g、味噌汁1.5g程度なので、それだけで1日の理想量の半分ほど摂ったことになります。6gというのは、かなり意識しないと、達成するのが難しい目標なのです。

■まとめ

この記事では塩分の影響についてまとめましたが、1日あたりの摂取量を1g減らしても、血圧は1mmHg下がるだけ、という報告もあります。つまり、10g摂っていた人が6gに減らしても、下がるのはたったの4mmHgにすぎません。

それよりもお漬け物にしょう油をかけて美味しく食べる、という選択をするのは個人の自由です。節制とQOLのバランスは医学的な知識とそれぞれの価値観に基づいて、冷静に判断すべきでしょう。

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