コラム

多くの職業がある中、もっとも健康的な生活をしている人が多いのは宇宙飛行士でしょう。限られた医療資源しかない宇宙空間で病気になったら命の危険に直結するので、もともと心身の状態が良好で健康への意識が高い人しか宇宙飛行士にはなれません。

そんな人たちでも、宇宙空間に長期滞在すると、例外なく健康面に大きなダメージを負います。地球に帰還した時には「病人に近い状態」と言われる彼らが健康を取り戻すためにどんなことをするのか――今回はそんな宇宙飛行士の健康管理について解説します。

■宇宙飛行士は世界でもっともハイレベルな健康マニア

宇宙飛行士は例外なく健康マニアです。そもそも選抜される時点で、健康状態が問われますし、訓練を積む過程で健康面の問題が見つかれば、宇宙へと飛び立つことはできません。

そのため、健康に関する正しい知識と高い意識を持って日々を送る人ばかりです。食事の栄養バランスや量、定期的な運動、十分な睡眠といった健康維持に欠かせない活動を怠りません。宇宙飛行士は全員が「自己管理のスペシャリスト」なのです。

自身が努力するだけでなく、育成し管理する機関も、彼らの健康維持をサポートしています。健康でいられるよう環境を整備し、心身の状態をチェックしているのです。

健康上の問題が見つかれば、宇宙へと飛びだつことが出来ません。そのため、宇宙飛行士は健康でいることに高いモチベーションを持っています。

■宇宙滞在には健康を損なう要素が主に3つ

そんな「超健康」な人たちがいざ、宇宙に長期滞在するとどうなるのか――このことはあまり周知されていません。

1回あたりもっとも長く宇宙に滞在した人物はロシアの宇宙飛行士ワレリー・ポリャコフで、その日数は437日におよびます。日本人では星出彰彦さんの198日が最長記録です。

国際宇宙ステーション(ISS)などの施設の居住性が高くなったことで、半年程度滞在する宇宙飛行士が増えています。

宇宙空間に長期間滞在すると、多くの人が心身に大きなダメージを被ります。その原因は主に3つあります。

①無重力による骨量や筋肉量の減少

地上では数十キロの体重を支えるために骨の強度が必要ですし、姿勢を保ったり歩いたりするためには筋肉が必要です。無重力の宇宙ではそういった必要性がなくなるため、長く滞在すると骨からカルシウム分が失われ、筋肉が少なくなります。

②宇宙線(放射線)による細胞へのダメージ

宇宙空間には高エネルギーの放射線が飛び交っています。地球上では大気の成分である窒素や酸素が一種のバリアとして機能するので、人が浴びる量は少なめですが、宇宙ステーションでは壁などを貫通した放射線により、細胞のDNAなどが傷害されます。

③閉鎖空間に長くいることのストレス

 閉鎖された狭い空間での生活にはストレスが伴います。また、長い時間を同じメンバーで過ごすため、人間関係のストレスが問題になることもあります。

■宇宙で人は一気に老け「ほとんど病人」に

こういった宇宙滞在が身体にもたらす影響は非常に大きく、老化を扱う医学の研究対象となるほどです。実際、地球に帰還した直後の宇宙飛行士は自力歩行出来ないケースもあります。

短期的にもっとも大きな影響が現れるのは重力への適応です。重力がある地球上では、脳に血液を送ったり、下肢の血液を心臓に戻したりするために、身体は血圧や血管の拡張・収縮を調節しています。

宇宙に長く滞在すると、その機能が弱るため、地上に帰還した直後は起立性貧血を起こしたり、下肢がひどくむくんだりするケースが少なくありません。

筋肉量の低下は歩行能力の低下をもたらします。わずかな距離を歩いただけで筋肉痛が起きたり、体重を支えきれずに転倒したりすることもあります。

骨量の低下は骨をもろくするのに加え、骨から溶け出たカルシウムのせいで尿路結石を引き起こすリスクアップにつながります。

宇宙線による影響はすぐには現れませんが、長期的には血管系の病気などを発症しやすくなることがわかっています。心筋梗塞や脳卒中、大動脈瘤などの病気で亡くなる人が宇宙飛行士に多いのは、血管内皮細胞が宇宙線により傷害されるため、と考えられます。

■リハビリで回復 水素の活用も視野に

宇宙滞在中に受けるダメージの多くは地上に帰還した後、適切なリハビリテーションを行うことで改善します。最近ではプログラムの充実が進んだため、45日程度のリハビリで、ほぼ元通りの生活を送れるといいます。

宇宙飛行士は国際宇宙ステーションに滞在している最中も、筋肉量や骨量をなるべく維持できるよう、運動を行うので、以前に比べて宇宙滞在によって受けるダメージは減少しています。

リハビリテーションに水素吸入を検討する動きもあります。水素にはトレーニング効果をアップするはたらきがあるので、リハビリプログラムの効果を増大する作用を期待できます。

特に、活性状態の水素(AFH)については、マウスの実験で筋力や持久力の増強効果が報告されているので、人間――宇宙飛行士についても同じ効果が現れる可能性は高い、といえます。

また、AFHには血管内皮細胞を安定させるはたらきもあります。地上帰還後にAFHの吸入を習慣づければ、血管系の大病を予防する効果が期待できます。

■まとめ

民間人の宇宙旅行がもうすぐもっと身近になる、と言われています。ただ、本来は重力のある地上で生活するように作られた私たちが宇宙空間に滞在すると、健康上のさまざまな問題を生じやすくなります。

帰還後のリハビリテーションが必須ですが、水素を利用すれば、その効果をより高めて、宇宙旅行のもたらす健康面のダメージを抑えることができそうです。

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