コラム

年の瀬が押し詰まり、2020年もあと数日を残すのみとなりました。例年なら、年末年始をどう過ごすか、楽しみな時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者数拡大が止まらない中、「どう安全に過ごすか」が懸念されています。

■寒冷と乾燥に加え新型も 止まらないコロナ拡大

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者数の増大が止まらない状況です。第2波が収束した10月には国内における1日あたりの新規感染者数が300人台にまで減少していましたが、11月に入り急増。12月25日には3,813人にのぼりました。

背景にあるのはさまざまな状況の変化です。環境的な要因としてあげられるのが、冬を迎えて寒冷化した気候の影響です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染力はは寒冷で乾燥した環境下ほど、長期間維持されるため、空気感染や接触感染のリスクが増大します。

 さらに、寒くなるとどうしても換気が難しくなります。筆者が最近、用事があって訪れた区役所でも、広いとは言えないスペースで多くの市民が手続きを待っている状態でしたが、窓は閉め切られていました。

 一方、人的な原因としては、経済との兼ね合いから中止の判断が遅れたGoToキャンペーンの影響を指摘する声が専門家からも上がっています。東京大学などの研究チームが発表したデータによると、同キャンペーンを利用した人がCOVID-19を思わせる症状を訴える割合は、利用していない人に比べて2倍程度も高いそうです。

 また、いわゆる「コロナ疲れ」から、第1波、第2波が襲来したときに比べ、一般の人の警戒意識がそれほど高まっていないことも、第3波収束の目処が立たない状況を招いている、と言えるでしょう。

 ここにきて管首相をはじめとする国会議員や自治体の首長、自治体議員などが相次いで多人数の会食に参加した、と報じられており、トップダウンで弛緩が進んでいる様子がうかがえます。

■現場ではリアルな医療崩壊のリスク

第3波の拡大で心配されるのが、医療崩壊のリスクです。感染拡大を受け、各自治体では受け入れ可能な病床をなんとか増やそうと努力していますが、医師や看護師の数には限りがあるため、簡単ではありません。

また、COVID-19患者を受け入れてしまうと、他の患者を受け入れられなくなる、というジレンマもあります。筆者は入院病床がある某中規模病院を3か月に1回程度の頻度で訪れて取材をしていますが、そこで聞く現場の声は切実です。

理事長の素早い判断で、第1波の前にCOVID-19患者を分別する体制を作ったものの、そのためには大きなマンパワーと資金を要したそうです。

地域密着型の病院であり、産科の入院病棟などもあることから、院内感染は絶対に避けなければならない、と考えると、その実現には非常に大きな労力とコストが必要なのです。

12月の時点で、その病院では通常通りの診療を実施できていますが、1か月先にはどうなっているかまったくわからない、と言います。

「設備を持たないうちのような病院がコロナ患者を受け入れるときは、医療が崩壊したとき」という理事長の言葉は非常に切実でした。

■本当に命取りになるのはコロナ感染以外

医療におけるリスクとして、現在はCOVID-19のみが注目されていますが、その他の病気や事故などのリスクが減ったわけではありません。

たとえば、冬に増える脳卒中の患者数は2017年の統計で111.5万人となっています。COVID-19の患者数はこれまで22.1万人なので、約5倍も多いのです。

さらに、国内におけるCOVID-19の死亡率は1.4%ですが、脳卒中の死亡率は17%にのぼるという報告があります。介護が必要になる割合も46%と高く、後遺障害も重篤です。

これは医療がひっ迫していない状況下での数字なので、この冬は脳卒中を発症した人が死亡したり要介護状態に陥ったりする割合はさらに高くなる、と考えられます。

同様のことは心疾患や交通事故など、高度な医療を必要とする健康上のトラブルすべてについて言えます。医療が崩壊寸前の状況で迎える年末年始を安全に乗り切るためには、COVID-19以外で医療を必要とする事態をできるだけ避ける必要があるのです。

基本的なことですが、食事・睡眠・運動という健康の基本を見直したり、冬期のリスク要因であるヒートショックが起きやすい浴室や洗面所、トイレなどの環境を改善したりすることが有効です。

事故のリスクについては、「もし事故を起こしたり巻き込まれたりしたら、医療を受けられないかもしれない」と認識して行動することが必要かもしれません。

救急車が来たものの搬送先が見つからない、という事態はコロナ以前から危惧されてきました。医療資源が底をつきつつある中で、緊急時には適切な医療を施してもらえる、と考えない方が無難です。

■まとめ

蛇口をひねると水が出るのと同じく、いざという時には適切な医療が受けられる、と国内では多くの人が信じてきました。世界を見渡すと、そういった国は非常に稀少であり、海外では多くの人がリスクと背中合わせで、日々を送っています。

医療資源がひっ迫する中、より、感染力の強い変異型が国内でも検出されるなど、危機はさらに強まっています。年末年始を安全に過ごすためにはメディカル・エマージェンシーを避ける自助努力が必須と考えるべきでしょう。

Categories: