コラム

ようやくピークを越えそうな感がある新型コロナウイルス感染症の第6波だが、国内ではその影響を受けて、救急医療現場で大きな混乱が発生しています。

大阪では病院への搬送に48時間以上を要するケースが報告されており、命を守るためには一般市民の側にも備えや適切な行動が求められる状況です。

■搬送に48時間以上 オミクロンで現場は大混乱

年明けから急増したオミクロン株感染者により、国内では第6波と呼ばれる感染爆発が発生しました。2月5日には1日あたりの新規感染者数が全国で10万人を上回るなど、かつてない規模での感染拡大となりました。

第5波における1日あたりの新規感染者数は2万6000人程度だったので、今回はその4倍近い患者数となっています。

幸いなことに、感染を引き起こしているオミクロン株は重症化率が低いため、重症者を収容しきれない、といった事態はほとんど発生していません。ただ、医療現場の混乱はすさまじく、その影響をまともに受けているのが救急医療です。

大阪では1月31日~2月6日の感に、救急車を呼んでから病院に収容されるまで48時間18分を要するケースがあった、と報告されています。119番に電話したのに、2日以上にわたり、医師による診療を受けられなかったのです。

■コロナ以前から危機に瀕していた救急医療

前述のような問題が発生しているのは、もちろん大阪だけではありません。全国ほとんどの自治体で発生しており、COVID-19患者以外についても、命をおびやかす事態となっています。

救急医療が機能不全に陥りつつあるのは、必要とされる業務の量が対応する病院のキャパを上回っているためです。救急搬送されてくる患者の4割程度に「COVID-19の疑いがある」とも言われており、受け入れにはこれまで以上の手間と時間を要します。

もともと余裕があれば、ある程度の負担増には耐えられたはずですが、救急医療の現場ではコロナ以前から深刻な人手不足が問題とされていました。実際、119のコールから病院収容までに要する時間は1997年には27.1分でしたが、2019年には39.5分と46%も伸びています。

筆者も現場の医師に話を聞いたことがありますが、週に何度も担うことがある夜間診療は非常に大きな負担だと言います。看護師等のスタッフも含め、救急医療は多くの医療関係者が過重労働を受け入れることで成り立っている、と言っても過言ではありません。

■背景にあるのは「とりあえず救急車」

救急医療の現場が追い詰められている原因はいくつかあります。医師などのスタッフ不足、高齢化による必要性の増大等、社会全体が抱える問題。さらに救急医療を利用する市民の側にも大きな問題がある、と指摘する専門家は少なくありません。

救急車を呼んでも経済的な負担が発生しないため、「とりあえず救急車」という使い方をする人が少なからずいるのです。

内閣府が行った平成29年度世論調査でも、救急車を呼んだ理由として「夜間、休日で病院の診察時間外だったから(15.2%)」「救急車で病院に行った方が早く診てもらえると思ったから(11.1%)」「どの病院に行けばいいかわからなかったから(5.1%)」などの回答が見られます。

政府公報では「突然の重い病気やひどいケガをした人に、応急手当を行い適切な医療機関に搬送するのが救急隊の役目」としながら、「救急車や救急隊員の数は限られていますので、症状の軽い方が安易な救急要請をすることは望ましくありません」と注意を促しています。

とはいえ、素人では判断が難しいケースもあります。そういった場合には「救急安心センター」に電話すれば、状況に応じてアドバイスをしてもらえます。「#7119」もしくは地域ごとに設定されている電話番号で、24時間相談を受け付けています。

■急病やケガの予防でリスクを軽減

医療資源が払底する状況は一朝一夕には改善されません。地域により事情は異なりますが、一刻を争う事態になったとき、必ずしも必要な医療を受けられる、とは考えない方がいいでしょう。

したがって、現状で個人がリスクを避けるためには救急搬送を必要とする状況に陥らないことがもっとも重要です。

救急搬送される人のうち、もっとも大きな割合を占めるのは急病で、2019年のデータでは65.5%を占めています。1999年には55.0%だったのが、高齢化の影響もあり、年々増加傾向にあります。

2番目に多い一般負傷は15.5%ですが、やはり増加が続いています。高齢化により自宅での転倒などが増えているものと考えられます。

一方、減少傾向にあるのが交通事故です。1999年には19.3%だったのが2019年には6.9%と1/3程度にまで減っています。

こういった状況から見えてくるのは、高齢者に多いヒートショックや転倒といったリスクの大きさです。冬期は特に入浴時や排便時などに温度差によるヒートショックで倒れる人が少なくありません。また、筋肉が強ばりやすいことや積雪・凍結などによる転倒事故も増えます。

そういったトラブルを避けるためには、日常からの小さな工夫がカギとなります。屋内の温度差を小さくする。体重や血圧などの体調をしっかり管理する。筋力やバランス感覚を養う運動を普段から心がける、といった取り組みにより、救急搬送を必要とするトラブルを予防できれば、医療資源がひっ迫している現状の中で、より安全にすごせます。

■まとめ

救急医療は国民の命を支えるための大切な資産です。大局的な問題は政治の力なしに解決しませんが、一人一人が健康を心がけることで、払底している現状をしのぐ助けにはなるはずです。

自身や家族を守るために、「健康であること」をより強く求められている、と考える必要がありそうです。

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