コラム

新型コロナウイルス感染症には「短期間で重症化する」というリスクがあります。軽症だった人があっという間に重症になり、2、3日で亡くなってしまう、というケースが少なくないのです。

その原因として「血管内皮細胞に感染する」ということがわかってきました。

重症化は年齢と基礎疾患がポイント

新型コロナウイルス感染症の患者数が増える中、国や自治体では軽傷者については自宅等での療養を推奨しています。病床数が足りなくなってきたため、入院する人をなるべく減らしたい、という思惑があるためです。

実際に、軽症のまま治癒にいたる人も多く、必ずしも間違った政策とは言えません。ただし、患者によっては急激に重症化し、中には死にいたるケースもあるため注意が必要です。

重症化する人の割合については諸説ありますが、中国における感染のデータを分析したニール・ファーガソン教授(イギリスの疫学者であり数学的生物学の専門家)らの発表によると、感染者が入院にいたる割合は年齢によって大きな差があることがわかっています。

20代では1.04%ですが、40代では4.25%、60代11.8%、80歳以上では18.4%となっています。年齢によって大きな差が現れるのは基礎疾患を持つ人の割合が異なることも、大きな要因と考えられます。

高血圧、糖尿病などの生活習慣病に加え、心血管疾患や慢性呼吸器疾患、がんなどの疾患を持つ人は重症化しやすいことがわかっています。60歳以上では基礎疾患を抱える人が多いため、重症化率が高いのです。

重症化を引き起こす要因の1つは血管への感染?

新型コロナウイルス感染症の重症化につながる要素はいくつかありますが、最近になって「血管への感染」が大きく影響している、との研究発表があり注目を集めています。

4月20日に著名な医学誌の1つである「THE LANCET」でチューリッヒ大学(スイス)のズザナ・ヴァルガ氏が発表した論文によると、「血管内皮細胞」への感染がみられた、とのことです。

この研究では、新型コロナウイルス感染により亡くなった3人の患者について、死後、病変がみられた臓器の血管を電子顕微鏡等で観察しています。その結果、腎臓や小腸などの血管内皮細胞にウイルス感染が認められました。

血管は体内の臓器にとって非常に重要な役割を担う「輸送ルート」です。栄養や酸素が運ばれてくるのに加え、老廃物の排出や身体の状態を整えるための各種物質の多くも血管により、体内を行き来しています。

そのため、あらゆる臓器の隅々にまで血管は行き渡っており、血管に感染するということはすなわち、新型コロナウイルスは多くの臓器に感染しうる可能性が高いということを意味します。

これまで「肺炎を引き起こす」とされてきましたが、ヴァルガヴァルガ教授らが検査した患者たちについては心臓や腎臓、肝臓、小腸等において炎症や血管内皮細胞の壊死が認められています。

感染を引き起こすのは血管内皮細胞に「受容体」があるため

新型コロナウイルスが血管内皮細胞に感染するのは血管内皮細胞に「受容体」があるためです。細胞の表面には「受容体」と呼ばれる一種の錠前があり、細胞内に取り入れる物質を選別しています。錠前に合うカギを持っている物質しか細胞の中には入れないのです。

多くのウイルスは特定のカギを持っており、そのカギに合う錠前――「受容体」を持っている細胞にのみ感染することができます。「受容体」の種類や発現する数は生物種や体内の部位によっても異なるので、あるウイルスが感染する、あるいは感染しやすい生物や部位は限られているのです。

これまで、鼻や喉などの上気道および目などの細胞には新型コロナウイルスの感染につながる「受容体」があることはわかっていました。血管内皮細胞にも同様の受容体が存在することがわかってきたことで、今後、治療や予防についての考え方が変わる可能性がありそうです。

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