新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、フランスで新たに、PCR検査をすり抜ける変異株が発見されました。今後、感染が広がれば、感染者の見つけ出し等に利用されているPCR検査が役に立たない、という新たな問題が世界中で起きることになります。

■ブルターニュで感染してもPCR検査陰性になる変異株

イギリス型や南アフリカ型、ブラジル型など、いくつかの変異株が報告されている新型コロナウイルス感染症ですが、3月15日にはフランスで新たな変異株の報告がありました。

発見のきっかけとなったのはブルターニュ地方の病院で発生したクラスターでした。新型コロナウイルス感染症の症状を示す患者について、検査を行ったところ、79名の感染が確認されました。

そのうちの7名はPCR検査で陰性と判定されており、彼らを含む8名からはPCR検査にひっかからない新たな変異が検出された、と報じられています。

■遺伝子をチェックするのがPCR検査

PCR検査は「特定の遺伝子が含まれているかどうか」を調べる検査で、犯罪捜査などにも利用されています。PCRというのは「Polymerase・Chain・Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)」の略です。ポリメラーゼという酵素の連鎖反応を利用して行うため、この名前がついています。

新型コロナウイルス感染の有無を調べる方法には他にも抗原検査や抗体検査がありますが、PCR検査はもっとも手軽であり、短時間で結果が出るため、もっとも多く利用されているのです。

新型コロナウイルス感染症について調べる場合には、特徴的な遺伝子配列をターゲットとして、検体にそれが含まれているかどうかをチェックします。

ただ、検査の精度はそれほど高くありません。陽性なのに陰性と判定されるケースが3割程度ある、と言われています。また、ウイルスがある程度増えないと、検出できないので、感染後数日は陰性と判定されるケースが少なくありません。

今回見つかった新たな変異株がなぜ、検査をすり抜けたのかはわかっていませんが、遺伝子をチェックするものだけに、変異が起きれば、検査漏れが増える可能性は否定できません。

■感染が広がれば東京五輪開催は困難に

今回、ブルターニュ地方で発見された変異株はまだ、その他の地域では見つかっていないので、それだけで大きな問題と考えるのは大げさでしょう。

ただ、もし感染が広がった場合には世界的に大きな影響が現れる、と考えられます。現在、多くの国で人が移動する際や集まる際にはPCR検査が行われています。

感染者を100%見つけられるわけではありませんが、信頼性が高く、なによりも簡易であり短時間で結果が出るため、使い勝手がいいためです。

もしも、そんなPCR検査をすり抜けるSARS-CoV-2が大きな割合を占めるようになったら、それに代わる検査方法は簡単に見つからないでしょう。

ブルターニュ型については感染力や重症化するリスクなどについて、大きな違いがある、とは報じられていませんが、PCR検査で検出できないため、今後、世界中に広がっていく可能性が高い、と言えます。

PCR検査は国境をまたぐ渡航についても、多くの国で入国の条件とされています。東京五輪を開催する際も、感染の拡大を防ぐ手段の一つとして、海外から訪れる選手や関係者、観客などにPCR検査を行うことが検討されてきました。

すでに開催が危ぶまれている東京五輪ですが、ブルターニュ型の感染拡大が起きれば、中止せざるを得ない、と思われます。

■まとめ

SARS-CoV-2は変異しやすいウイルスであり、すでに数千の亜型が存在することがわかっています。感染拡大が起きるのはその中のごく一部ですが、ブルターニュ型はPCR検査で検出されない、という特徴があるため、今後一気に広まる可能性を否定できません。

なにが起きてもおかしくない――コロナ禍の中で私たちに求められているのは、そんな意識を粘り強く持ち続けることかもしれません。

Categories: