コラム

国内では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波が沈静化する中、後遺症が大きな問題として注目を集めるようになりました。体内からウイルスが消えた後もさまざまな症状が長く続くケースがあり、生活に支障をきたす人も少なくありません。

まだまだ発症の仕組みや治療法についてわからないことだらけですが、ロシアの研究グループがこのほど、「活性状態の水素(AFH)」の吸入により後遺症を軽減できる、という研究結果を発表しました。

■中国の研究では1年後も半数が後遺症

COVID-19の後遺症については現在、多くの機関で研究が進められており、発症後数か月~1年を経過した患者において、さまざまな症状が見られることがわかっています。

倦怠感や息切れ、咳、記憶障害、うつ、味覚・嗅覚異常、脱毛など症状は多様ですが、後遺症の基準が未だ定まっていないこともあり、発症の割合については研究により大きな差異があります。

たとえば、ワシントン大学(アメリカ)の研究者らが行った研究では、軽症者の32.7%、入院した患者の31.3%に、COVID-19発症から6か月たった時点で、なんらかの症状が見られた、と報告されています。

中国の武漢で行われた研究によると、入院患者の49%が発症後1年たった時点でやはりなんらかの症状を抱えていたそうです。

■原因不明 有効な治療法も見つかっていない

後遺症の中には日常生活に支障をきたすものやQOLに関わるものが多く、患者にとっては非常に切実な問題です。しかしながら、COVID-19についてはまだまだわからないことが多く、後遺症を発症する仕組みも今のところ定かではありません。

世界中の研究者が研究を重ねていますが、なぜ後遺症が起きるのか、どのように治療すればいいのか、わかっていないのが現状です。

したがって、医療機関を受診しても、なかなか有効な治療を施してもらえません。COVID-19後遺症だと診断された場合も、対症療法的な治療にとどまるケースが大半です。

幸いなことに、多くの人は歳月を経ると共に、症状が軽減し治癒します。ただ、中には1年以上苦しむ人も少なからずおり、長期にわたって仕事や家事、勉強などなすべきことができないため、うつや自殺につながるケースも少なくありません。

■COVID-19後遺症を活性状態の水素(AFH)で改善

世界的にCOVID-19後遺症の治療法を研究する動きが活発化する中、このたびロシアで活性状態の水素(AFH)の吸入により改善効果が見られた、とする論文「Ингаляционный водород в реабилитационной программе медицинских работников, перенесших COVID-19」が発表されました。

研究を主導したのは世界的に著名な呼吸器科の専門医、アレクサンダー・チュチャーリン医師です。同医師はロシアではじめて肺移植に成功したことでも知られる人物であり、COVID-19については後遺症が問題になることを早くから指摘していました。

AFHは水蒸気に囲まれることで安定化した原子状水素であり、H(H2O)mという化学式で表されます。水素が人の健康に与える効果については、すでに多くの研究論文が発表されています。

AFHは水素の中でも特別に強く作用するものと考えられており、今回、チュチャーリン教授の研究によって、その一端が示された、と言えます。

臨床試験はロシア大学病院で行われました。対象となったのは倦怠感や息苦しさなどの後遺症を抱える医療関係者60名です。

標準的な治療のみを行うグループ30名と標準的な治療に加えAFHを吸入するグループ30名に分け、試験開始前と10日経過後に69項目にわたる検査を行ったところ、AFHを吸入したグループでは明かな改善効果が報告されました。

特に、呼吸器系の機能改善効果は顕著であり、その他にも一定時間内に歩行できる距離を調べる実験では、AFHを吸入したグループでは大きな改善効果が見られています。

標準的な治療のみのグループでは10日経過後も歩行距離がほとんど伸びておらず、その差はあきらかです。1階から2階へと階段を上ることもできなかったのが、4階まで上れるようになった、と報告した被験者もいます。

■AFHは過熱蒸気還元法により産生される

水素を産生する器機は現在、国内外で多数提供されていますが、AFHを産生できるものは非常に限られています。チュチャーリン教授が主導した臨床試験では過熱蒸気還元法によりAFHを産生するSuisoniaが使用されました。

一般的な水素ガス生成器が水を電気分解して水素を産生するのに対し、Suisoniaでは過熱した水蒸気からカートリッジにより酸素を奪うことで、水素を産生します。

産生された水素原子は水蒸気に囲まれて安定するため、活性の高い状態を長く保てるものと考えられます。この現象については、サムスン電子がすでに論文化しており、公知されています。

■まとめ

COVID-19後遺症が世界的に大きな問題となる中、AFHの吸入という改善策が示されたのは大きな第一歩だといえます。AFHについてはこれまでも、「抗炎症」「免疫調節」「血管内皮細胞の状態改善」等の効果が立証されてきました。

COVID-19がもたらすダメージの改善につながる効果であり、後遺症に対する効果はある程度予想されていました。後遺症患者に対する臨床試験を経て、論文化されたことで、今後はAFHを医療現場などで使用するケースが増えるものと考えられます。

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