コラム

脂質異常を抱える人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった場合、死亡するリスクが正常な人より大幅に高いことがわかっています。

自覚症状がないので、「実は数値が高いのでは」と心配しつつも放置している人が少なくありません。命を落とすリスクが格段に高くなってしまった現状を踏まえ、脂質異常の改善に取り組んでみませんか?

■血液中の悪玉コレステロールと中性脂肪が異常値に

厚生労働省が発表した資料によると、脂質異常の人がCOVID-19に感染した場合の死亡率は3.30%となっています。そうでない人の死亡率は0.71%なので、4.6倍も高いことになります。

脂質異常とはその名の通り、血液中の脂質濃度が基準値を外れている状態のことです。人の血液中に存在する脂質の多くはコレステロールと中性脂肪です。厄介者として扱われていますが、それぞれ体内では大切な役割を担っています。

たとえば、コレステロールは細胞膜を強化する成分であり、各種ホルモンや胆汁などの原料にもなります。中性脂肪はエネルギー源になる物質で、運動や体温の維持に使われます。

ただし、どちらも増えすぎると、少しずつ健康を害していくケースが多いため、健康診断では一般的な検査項目に盛り込まれているのです。

■脂質異常は動脈硬化の主な要因

脂質異常が問題視されるのは動脈硬化につながるためです。コレステロールはよく知られている通り、「悪玉」と「善玉」に分けられます。

一般に悪玉とされるのはLDLコレステロール――肝臓で合成され全身に運ばれるコレステロール。一方、全身から回収されてくるHDLコレステロールは善玉とされています。

血液中に存在するLDLコレステロールが多すぎると、血管壁に入り込むようになります。さらにこの血管壁に入り込んだLDLコレステロールは活性酸素により酸化され、有害な酸化LDLコレステロールになります。

酸化LDLコレステロールには血管壁を傷つける強い毒性があるため、このプロセスが進むと、血管の内側を覆う内皮細胞がダメージを受けます。血管内皮細胞は環境や状況に合わせて血管を拡張・収縮させるはたらきを担っています。

そのため、傷害されると血管が伸び縮みできず硬くなってしまいます。これが動脈硬化です。

ただし、人体には免疫機能があるので、一方的に傷つけられるばかりではありません。マクロファージという免疫細胞が集まり貪食することで、有害な酸化LDLコレステロールを取り除こうとします。

それはいいのですが、貪食を終えたマクロファージはふくれあがって泡沫細胞と呼ばれる状態になり、泡沫細胞が凝集することでアテロームとよばれる塊を形成します。

このアテロームが血管壁を内側に押し上げてできるのがプラークと呼ばれるこぶ状の組織です。プラークは血管の内径を狭めて血流を妨げるのに加え、簡単に破れます。プラークが破れると、血小板が集まってきて血栓を形成します。

脳梗塞や虚血性心不全といった命に関わる病気はこのように、ほとんどの場合脂質異常が原因で発生するのです。

■改善の基本は食生活の見直しだが家族性も

脂質異常の原因は主に2つあります。1つは生活習慣――特に食生活です。血液中のLDLコレステロールは飽和脂肪酸を摂り過ぎると急増します。

飽和脂肪酸は肉の脂身やバター、生クリームなどに多く含まれているのに加え、チョコレートなどの菓子類、インスタントラーメン等の加工食品にも多く含まれています。

一方、同じ油脂でもLDLコレステロールを引き下げてくれるのが不飽和脂肪酸です。植物や魚に多く含まれているため、オリーブオイルを多く使う地中海式の食事や魚を多く食べる和食を取り入れることで、不飽和脂肪酸の摂取量を増やせます。

中性脂肪は食事量の制限と運動習慣によりコントロールできます。エネルギーの収支が黒字になりすぎると、血液中の中性脂肪が増えてしまうので、食事のカロリーを適切に抑え、運動によって消費すれば、正常値を維持しやすくなります。

脂質異常が起きるもう一つの要因として、家族性の高コレステロール症があります。遺伝的な要因により、肝臓におけるLDLコレステロールの代謝がうまくできない人がいるのです。

実は筆者の母親もこの家族性高コレステロール血症なので、食事に気を配り、運動を心がけているにもかかわらず、検査では「LDLコレステロール値が高すぎる」という結果がでてしまいます。

この疾患を抱えている場合には、食事や運動でコレステロール値をコントロールできないため、服薬などの治療が必要です。

■まとめ

かつて「ダイエットは明日から」というCMがありました。脂質異常は即、痛みやリスクを伴う健康上の問題ではないため、ついつい対策を先延ばしにしがちです。

ところば、この記事で紹介したように、コロナ禍の中では重症化・死亡リスクを大幅にアップする要因なので、できるだけ早くに改善する必要性が高くなっています。

明日からではなく、今日から対策にトライしてみてはいかがでしょう?

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