自殺予防のカギは健康の維持にある

Medical Life Science Laboratory

著名な芸能人の自殺報道が相次いでいます。7月に三浦春馬さんが亡くなったのを皮切りに、9月半ばには芦名星さん、さらに直近には竹内結子さんが自死したと伝えられました。

有名人の自殺報道は社会において自殺の連鎖を生むと言われます。予防のカギはいくつもありますが、健康を維持することにも実は大きな効果があると考えられます。

■総数11万人! 世界でも圧倒的に多い日本の自殺者

2016年における世界各国の自殺率を比較した世界保健機関の統計によると、日本は人口10万人あたり18.5人でワースト14位にランクされています。最多はリトアニアで人口31.9人。文化や経済面で近い韓国は26.9人で4位となっています。

ただし、この統計にはからくりがあり、実際には日本が断トツのワースト1位だと指摘する専門家もいます。国内では遺書を残した人のみを自殺者としてカウントするため、諸外国に比べて、統計上の数字がかなり抑えられているのです。

国内における2016年の自殺者数は2万1897人とされていますが、WHOが勧告するやり方で試算すると、実際には11万人程度になる、と言われています。その数字をもとに計算すると、自殺率は5倍以上に跳ね上がります。

ハラキリやカミカゼで知られる通り、日本は世界に冠たる自殺大国なのです。

■最多は「健康問題」 以下「経済・生活問題」「家庭問題」

自殺の原因は人それぞれ異なりますが、厚生労働省および警察庁が発表している資料によると、遺書等に記されている自殺の原因でもっとも多いのは「健康問題」だと言います。

以下「経済・生活問題」「家庭問題」と続きますが、「健康問題」は2番目に多い「経済・生活問題」の2倍以上にのぼっており、健康が人の生きる意思に与える影響の大きさがよくわかります。

自殺の原因となった健康問題の中で、もっとも多いのは「うつ病」です。しばしば誤解されていますが、「うつ病」は精神のトラブルではありません。胃潰瘍が胃という臓器のトラブルであるのと同じく、脳のトラブルにより精神的なバランスが崩れる病気です。

ストレス等が重なることで、脳内で分泌される神経伝達物質の過不足が継続的に発生することで、発症します。自殺者の8~9割は「うつ病」や「うつ状態」に陥っていた、と言われています。

■自殺した人の脳で起きていること

自殺につながる危険な「うつ病」ですが、最近では発症に関連するさまざまな要素が明らかになってきました。その一つに「長寿遺伝子」とも呼ばれるサーチュイン遺伝子との関係があります。

山口大学大学院医学系研究科の渡邉義文教授らのグループが2016年に発表した論文では、脳内で発現するサーチュイン遺伝子の量が少ないと、ストレスに対する適応力が低下することをマウスの実験で確認できた、と報告されています。

同じストレスにさらされても、耐性が高い人と耐性が低い人がいるのは周知の事実ですが、その要因の一つにはこういった遺伝的な違いがあると考えられます。

さらに、脳内の炎症がうつ病に関わっている、という研究報告もあります。マンチェスター大学の研究者が発表した論文によると、大うつ症状がある患者の脳をPETを使って調べたところ、前帯状皮質などの特定部位で、炎症の指標が高くなる現象がみられたそうです。

■健康維持が自殺予防につながる

自殺につながるさまざまな要因を並べてみると、見えてくるのはやはり健康であることの重要性です。最大の原因とされる「健康問題」の発生を抑えられるのはもちろん、炎症の抑制などにより、うつのリスクを引き下げることもできます。

日常生活におけるストレスを減らすのは簡単ではありません。ストレスが増えると、体内では活性酸素が増えることがわかっています。ストレス耐性が低いタイプの脳では大量の活性酸素が発生し、炎症を起こしているのではないか、とも考えられます。

活性酸素を抑え、炎症を抑えることは生活習慣病など、多くの病気を予防し、心身の健康を維持するための基本的な活動の一つです。すなわち、健康を維持できるよう、食事や睡眠、運動などの生活習慣に配慮することで、うつになるのを防ぎ自殺のリスクを引き下げることができるのです。

■まとめ

健康とは「病気でない状態」ではありません。世界保健機関などでは精神的、社会的な充実を含めた概念である、と定義しています。逆説的な言い方になりますが、その定義に照らすなら、自殺した人はみな健康ではなかった、とも言えます。

すなわち、真の健康を実現できれば、生活の中から自殺につながる原因を減らしていけるにちがいない、と考えてもよいはずです。

 

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