コラム

芸術鑑賞を好む人は死亡率が低い――近年、そんな研究結果が報告されています。健康に影響する要素と言えば、食事、睡眠、運動の3つがよく知られていますが、芸術は第4の要素となるのでしょうか?

■イギリスで50歳以上の男女を追跡

死亡率に対する芸術鑑賞の影響を調査したのはイギリスUniversity College LondonのDデイジー・ファンコート氏らのグループ。同グループではイギリスに在住する年齢50歳以上(平均年齢65.9歳)の人6710人について、追跡調査を行いました。

男女の割合はほぼ半々。中央値で13.8年という長い歳月をかけた調査です。人の死亡率にはさまざまな要素が関係します。

病歴や慢性疾患の有無、精神状態といった健康上の差異はもちろん、性別や人種、職業といったその人のアイデンティティに関わる事柄も影響するので、調査結果を分析する際にはそういった情報を変数として織り込まれました。

■芸術に関心がない人は死亡率が2.5倍高い

調査対象の芸術鑑賞については美術館や画廊、展覧会等の見学、コンサートやオペラ、演劇の鑑賞などについて、頻度を聞き取り、まったくなし、低頻度(年に1~2回)、高頻度(数か月に1回以上)に分類されています。

追跡期間中の死亡率を観察したところ、まったく観賞しない人は47.5%にのぼったのに対し、低頻度でも芸術を鑑賞する人の死亡率は26.6%、高頻度の人では18.6%と、死亡率と芸術鑑賞には高い関連性が現れました。

研究者は「因果関係は不明」としていますが、芸術鑑賞が寿命に影響するのは明らかだと言えそうです。

■芸術で健康上の問題を改善する研究も

イギリスの同大学では、芸術を使って身体的・精神的な健康状態を改善する取り組みも始まっています。この研究で行われているのは、産後うつの女性に歌を歌わせたり、パーキンソン病患者にダンスをする機会を設けたり、といった取り組みです。

従来の治療では結果が出にくい健康上の不具合を「芸術に親しんでもらう」という新しいアプローチで改善できたら、新たな治療方法の一つとして、今後、積極的に活用していくことを研究者は目論んでいるようです。

■まとめ

人の健康はさまざまなピースが複雑に組み合わさって実現されています。まだ、そのはたらきが十分に解明されていないピースも多々ある、と考えられる中、芸術には大きな可能性が眠っている、と考えてよいかもしれません。

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