コラム

緊急事態宣言が解除されて以降、国内の新規感染者数がジワジワと増えています。再び自粛要請をかければ、新たな感染を抑えられるかもしれませんが、社会を維持するためには経済活動の再開が必須です。

感染抑制と経済活動の再開という相反する課題をどう両立させるのか――そのカギの一つが個人の感染症対策です。中でも血糖値のコントロールには重要な意味があります。

■国内1000万人 誰が患者でもおかしくない

糖尿病は血液中の糖分が増える病気です。過剰な糖分によって血管など身体のあらゆる部位の細胞がダメージを受けるので、動脈硬化や腎臓障害、神経障害、網膜症などいろいろな合併症につながります。

糖尿病はいろいろな原因で発症しますが、もっとも多いのは過剰な糖分の摂取など生活習慣が原因で発症する2型と呼ばれるタイプです。糖尿病の患者数は年々増加しており、2017年の調査では328.9万人とされています。

ただ、なんらかの症状が出てくるのは、かなり重症化してからなので、糖尿病およびその予備軍は1000万人にのぼると言われています。

「暴飲暴食で肥満した人の病気」と思われがちですが、日本における糖尿病患者のBMIは平均23です。たとえば身長170センチの人であれば66.5キロ、160センチの人であれば59キロとなり、特に「太っている」と感じる体型ではないでしょう。

実際、BMIの標準は18~25とされており、糖尿病患者の平均は標準体型なのです。

■糖尿病の人は感染しやすく重症化しやすい

糖尿病患者には感染症にかかりやすい上、重症化もしやすいというリスクがあります。理由はいくつかありますが、いちばんにあげられるのはやはり免疫力の低下です。ウイルスや細菌と闘う細胞がダメージを受けることで、病原体に感染しやすくなります。

また、糖尿病の人はもともと身体の各部にダメージを負っていることが多いので、感染によるダメージが重なると、容易に重症化してしまいます。

さらに、糖尿病が進むと血管が劣化するので、健康な人に比べて血流が悪化します。そのため、感染により障害された部位が治りにくいという問題もあります。

■新型コロナの感染率は変わらないが重症化しやすい

気になる新型コロナウイルス感染症への影響ですが、中国やアメリカの患者を調べたデータによると、糖尿の人とそうでない人を比べた場合、感染率にはほとんど違いがないことがわかっています。

いずれの国でも調査対象となった患者に占める糖尿病患者の割合は10%程度でした。中国、アメリカとも糖尿病の有病率が10%程度なので、感染率への影響はない、とデータからは考えることができます。

一方、重症化するリスクについては糖尿病の関与が強く疑われます。アメリカなどのデータから新型コロナウイルスに感染した糖尿病患者が重症化する割合は健康な人に比べて2~2.5倍高いと報告されています。

新たな感染症が糖尿病の患者にとって危険性が高い原因については厚生労働省が発表している資料、「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)感染してもひどくならないために糖尿病または血糖値が高い人へ」が参考になります。

免疫には人がもともと備え持っている一時防御的な「自然免疫」と、感染後に抗体を作ることで獲得する「獲得免疫」があります。新たな感染症について抗体を持っている人はいないので、当初は自然免疫のみで対抗するしかありません。

糖尿病の人はこの自然免疫が弱っているため、ウイルスに対抗できず重症化しやすいのです。

■カギになるのは血糖値のコントロール

それでは、糖尿病の人が新型コロナウイルスに備えるにはどうすればよいのでしょう? もっとも基本となるのは、マスクの着用や手洗い、三密を避けるといった感染予防の徹底ですが、免疫の維持も大切です。

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「Association of Blood Glucose Control and Outcomes in Patients with COVID-19 and Pre-existing Type 2 Diabetes」より転載
(横軸が経過日数、縦軸が生存率)

中国の研究機関が発表したデータによると、2型糖尿病の患者が新型コロナウイルスに感染したケースでも、血糖値を適切にコントロールできていれば、死亡率への影響はかなり小さいことが分かっています。

こういったことから、新型コロナウイルス感染症とうまく付き合っていかなければいけない新たなフェーズでは血糖値のコントロールが今まで以上に重要だと言えそうです。 最近、健康診断を受けたことがない人はまず、血液検査を受けてみるのがおすすめです。その上で、問題が見つかった場合には、医師の指導のもとで、食事や運動などの生活習慣を工夫してみてください。

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