ワクチン接種の対象が広がる中、子供への接種を巡って激しい反応が見られます。接種を計画する自治体に「殺す」など脅迫する電話がかかってきた、とも報じられており、混乱が起きています。

子供へのワクチン接種はどう考えるべきか――日本小児科学会がこのたび発表した資料を基に解説します。

■絶対反対! ワクチン接種に過激な抗議行動も

高齢者へのワクチン接種が進む中、政府は2021年6月からワクチン接種の対象年齢を引き下げました。これまで16歳以上としてきたのを12歳以上に変更したのですが、この措置を受け、SNSを中心に猛烈な反対運動が起きています。

子供向けの接種を予定する自治体の市役所などには抗議の電話が殺到。中には殺害を予告するものもあり、自治体職員が対応に苦慮している、と報じられました。

反対運動の中心となっているのはSNSです。facebookを確認すると、接種反対をうたうグループがいくつもあり、中にはフォロワーが7000人を超えるものも見られます。

大人の場合、接種するかどうかは自己責任で判断できます。一方、16歳以下の子供がワクチンを打つかどうかはほとんどの場合、大人の意向で決まるため、ワクチン接種そのものに反対する意見が強くなるようです。

facebookでも「子供に打つのは犯罪」といった記述が50件もシェアされているなど、大人の責任を問う声が高まっています。

■子供に対するワクチンの効果と副反応は海外データを参照

気になるワクチンの副反応ですが、大人についてはこれまでに行われてきた追跡調査から、全体的な傾向や割合が明らかになってきました。

今回、子供への接種が国内で認められたのはファイザー社製のみですが、大人の場合には接種部位の疼痛等、比較的発症率の高いものから、発熱、倦怠感、頭痛、さらには非常にまれに起きるアナフィラキシーショックなどの副反応について、データが揃いつつあります。

一方、子供への接種については海外でのデータが参考になります。ファイザー社製のワクチンについては同社が12歳~15歳の子供を対象にアメリカで臨床試験を行っており、その結果が3月に発表されました。

副反応はその他の世代と同等であり、安全性に大きな問題は見られなかった、と報告されており、子供のCOVID-19ワクチン接種に反対する理由はない、と言えます。

一部には「ワクチンにより遺伝子情報が書き換えられる」といった情報を根拠に長期的な影響を心配する声もありますが、これは専門家が完全に否定しています。細胞内でDNAからmRNAへの転写は行われますが、mRNAからDNAへの転写は起きないためです。

■関係する大人、基礎疾患のある子供が優先

ただ、子供のCOVID-19感染を効果的に予防するためには、適切な順序でワクチンを接種する必要がありそうです。

日本小児科学会が先般発表した見解では、健康な子供への接種を開始する前に、まず子供に関わる職業の成人を対象とするワクチン接種を進めるべき、とされています。

子供の医療ケアを担当する医療者、教師や幼稚園、保育園の職員、学習塾や児童相談所の職員など、日常的に子供と接触する成人の感染を抑えることで、子供を守る効果が期待できる、というのが日本小児科学会の見解です。

さらに、そういった成人に次いで、接種を進める対象として、同学会があげているのが「重篤な基礎疾患を持つ子供」です。子供が感染した場合、大人に比べて重症化しにくいことがわかっていますが、基礎疾患を持つ場合は別です。

神経疾患、慢性呼吸器疾患および免疫不全症を持つ子供は特にリスクが高いため、優先的に接種を進めることが求められます。

優先順位の最後に置かれている「健康な子供」についても、ワクチンを接種する意義はある、というのが日本小児科学会の見方です。アメリカで行われた臨床試験では接種の効果は大人以上に高い、と報告されています。

デルタ株などの変異株は若年層が感染するリスクが高いため、ワクチンを打つことのメリットは大きいと言えます。ただ、日本小児科学会では健康な子供については、メリットとデメリットを本人と親がしっかり理解し、共有した上で判断するべき、とも述べています。

接種対象年齢の子供がいる方は厚生労働省等の資料をしっかり読んで、正しい情報を取得してください。YouTubeなどで語られている事柄の真偽を一般の人が判断するのは不可能なので、公的な資料を判断のベースにすることが大切です。

■まとめ

多くの大人にとって、子供の健康は自身の健康以上に大切です。そのため、過激な言葉が飛び交う状況となっていますが、だからこそ、正しい情報に基づいて冷静に判断する必要があります。

打つにしろ打たないにしろ、大人がそれぞれ責任を持って判断すべきことであり、他人の選択を批判するのは正当な行為とは言えません。

くれぐれも子供にとってのメリットとデメリットを正しく秤にかけてください。

Categories: