コラム

10月は例年、インフルエンザワクチンの接種が始まる時期です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との兼ね合いもあり、ワクチンを打つべきかどうか、判断に迷っている方が少なくないはず。

一般社団法人日本感染症学会などの関係機関は接種を勧めていますが、はたしてどう判断すべきか――この記事では現在わかっている情報を整理してみました。

◆コロナ禍でこれまでとは異なるインフルエンザワクチン事情

国内では例年、インフルエンザワクチンの接種が厚労省により推奨されてきました。その効果もあり、近年は2500~3000万人の人がワクチンを接種しています。

ただ、2021年はCOVID-19ワクチンの接種と重なる人も少なくないため、これまでとは事情が異なります。同時期に2つのワクチンを打つことで、悪影響が出る恐れはないのか、などの心配があり、二の足を踏む人が増えるものと考えられます。

インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンとの関係について、厚生労働省では2週間あければ大丈夫、としています。

また、ブリストル大学(イギリス)で行われた研究では、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種してもまったく悪影響はない、と報告されており「問題ない」というのが現状では公的な見解と言えそうです。

ただ、COVID-19ワクチンについてはどのような副反応をもたらすのか、まだわかっていない部分もあります。インフルエンザワクチンの接種については、メリットとデメリットを冷静に比較して判断する必要があります。

◆COVID-19予防でインフル激減 ワクチンは不要

コロナ禍以前から、インフルエンザワクチンには根強い不要論がありました。例年、1000万人程度が発症する国民病ですが、ワクチンを接種する人は全国民の4人に1人程度です。

発症した場合の症状もCOVID-19に比べれば軽く、タミフルなど効果の高い薬もあるため、ワクチンが必要と感じる人はそれほど多くありません。

また、コロナ禍の中で患者数が激減していることも、ワクチンの必要性を引き下げる要素の一つです。2020~2021年シーズンのインフルエンザ感染者数は1.4万人程度と厚生労働省が推計しています。

例年の1/1000程度まで激減した理由はまだ確定されていませんが、三密の回避やマスクの着用、手洗いの励行などのCOVID-19予防がそのままインフルエンザの予防につながった、という説が有力です。

この冬もCOVID-19予防は継続される可能性が高いため、インフルエンザの流行は昨年同様、大きく抑えられるものと考えられます。

◆免疫低下で今冬は大流行する可能性も

一方、今冬はインフルエンザが大流行するのでは、と警鐘を鳴らす専門家もいます。日本感染症学会が発表した資料では、激減した昨シーズンに加え、一昨シーズンもインフルエンザを発症した人が例年よりも少なめでした。

インフルエンザウイルスに接する機会が2年続けて少なくなったことから、免疫が弱まっている人が増えている可能性を日本感染症学会などでは指摘しています。

インフルエンザに感染して発熱した場合、COVID-19との区別がつきにくいこともあり、生活や治療が制限されるケースも予想されます。専門家の多くがコロナ禍だからこそのインフルエンザワクチン接種を勧めるのはそういったリスクがあるためです。

インフルエンザワクチンの接種にはもう一つ、大きなメリットをもたらす可能性があります。マイアミ大学(アメリカ)で行われた研究では、インフルエンザワクチンを接種することで、COVID-19を発症した場合に重症化するリスクが大幅に低減する、と報告されました。

同研究によると、インフルエンザワクチンを接種していない人は接種済の人に比べ、緊急救命室に搬入される可能性や脳卒中になる可能性がいずれも58%も高いといいます。

◆高齢者や子供、基礎疾患がある人は接種を

すでにわかっていることですが、インフルエンザは健康な人にとってはそれほど恐ろしい病気ではありません。ただ、高齢者や子供、基礎疾患がある人には、命の危険をもたらすこともあるため、注意が必要です。

65歳以上の高齢者や9歳以下の子供、さらには慢性呼吸器疾患や慢性心疾患、糖尿病、慢性腎疾患などを有する人にとってはインフルエンザワクチンの接種は大きな意義がある、と言えます。

◆まとめ

インフルエンザワクチンの理想的な接種時期は10月末までとされています。ワクチンの効果が高いレベルで維持される時期とインフルエンザの流行シーズンを合わせるためには10月中に接種することが望ましいのです。

ただ、COVID-19ワクチンをこれから接種する人がいる中、同時期にインフルエンザワクチンを接種するのは避けた方がよい、と言われています。COVID-19ワクチン接種後、2週間以上をあけた方がよいため、人によっては接種時期がずれこむことになります。

接種を希望する人は、かかりつけ医等に相談して、接種の時期を決めるとよいでしょう。

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