コラム

気象庁が発表している長期予報によると、この冬の気温は北日本をのぞいて「ほぼ平年並み」になるとのことです。11月後半の時点で、国内ではCOVID-19感染者数が過去最多を更新するなど、予断を許さない状況が続いています。

寒くなると、SARS-CoV-2の感染リスクは増大します。有効な予防策であるマスクの効果について、最新の研究を基にあらためて確認しておきましょう。

■低温と乾燥で高まる空気感染のリスク

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)はエアロゾル感染をすることがわかっています。会話や咳、くしゃみなどにともなって飛び散った唾液は通常、重力により落下するため、長く空気中にとどまることはありません。

しかしながら、時間がたって乾燥すると、ウイルスを含む微粒子(エアロゾル)となって、空気中に舞い上がります。この段階で感染力を失っていれば、エアロゾル感染を引き起こすことはありませんが、低温・乾燥の環境下ではウイルスの感染力が長く維持される上、乾燥にいたる時間も短くなります。

そのため、冬期はSARS-CoV-2の感染リスクが大幅に増大するのです。換気をすれば、感染リスクを抑えられますが、寒くなるとどうしても、窓を開けるのがためらわれます。

実際、外気温が10℃を下回る日に、走行している電車の窓を開けるのは困難でしょう。エアロゾル感染は心配ですが、低温がもたらす健康リスクも非常に大きいので、厳寒の中で窓を開けて換気をするのは現実的な選択肢とは言えません。

■ソーシャルディスタンス1メートルではウイルスを吸い込んでしまう

換気が難しければ、せめてソーシャルディスタンスをしっかりとりたいところです。厚生労働省が経団連に送った要請文にも、「事務所や作業場においては、人と人との間に十分な距離を保持(1メートル以上)すること」という1文が盛り込まれています。

ただ、東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らが行った研究ではソーシャルディスタンスを1メートルとっても、一定量のウイルスを吸い込んでしまう、と発表されています。

感染力ベースの値では、密着状態(距離25センチ)に比べ、距離1メートルでは3割程度のウイルス量を吸い込んでしまうことが判明しており、ソーシャルディスタンスをとるだけでは不十分と言えそうです。

さらに言うと、この数値は飛沫の吸い込み量であり、エアロゾルは考慮されていません。

エアロゾルは空気中を浮遊するので、ソーシャルディスタンスで吸い込み量を減らすことはできません。

室温を維持するために換気を減らし、エアロゾルが空気中に漂う環境下では、マスクの着用がほとんど唯一の感染予防策と言えます。

■綿マスク、サージカルマスク、N95マスクの効果は?

前述した東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野による研究では、マスクの効果についても詳しい検証が行われています。

呼吸に類似したウイルスの吐出を行うマネキンと吸い込みを行うマネキンを50センチ離して設置。マスクの種類によってウイルスの吸い込み量がどれだけ変化するのかを調べたのです。

その結果、マスクを装着しない状態に比べ、綿のマスク(布マスク)では57%、サージカルマスクでは47%、N95マスクをフィットさせた状態では12%に吸入するウイルス量を減らせることがわかりました。

ちなみに、この実験で用いられた飛沫粒子は質量中央径で5.5±0.2μmというものですが、一部は環境下で蒸発してエアロゾルになった可能性がある、とされており、エアロゾル感染もあり得る状況での実験となっています。

やはり、医療用のN95マスクが吸入するウイルス量をもっとも大きく減らせるようですが、それでもマスクなしに比べて1割程度は吸入してしまうので、マスクのみでは感染を予防しきれない、と考えるべきでしょう。

■素材で大きく異なるウイルスの透過性

SARS-CoV-2感染予防として世界中で広がったマスクですが、一部ではファッションアイテムとする動きも見られるようになってきました。その結果、手作りを含め、さまざまな素材が用いられるようになっています。

ただ、もともとマスク用として開発されたわけではない素材にどの程度のウイルス捕集効果があるのか、気になるところです。ファッション性に優れていても、感染を予防する効果が低ければ、装着する意味は「心理的な安心」にとどまります。

マスクの素材がもたらす有効性については、ケンブリッジ大学のユージニア・オークリー氏らの研究グループが行った発表が役立ちます。この研究では、0.02~0.1μmの粒子を人が咳き込んだ時と同様の速度で飛散させて、さまざまな素材の捕集効果を調べています。

SARS-CoV-2は直径 0.06~ 0.14μm の球形なので、各素材がエアロゾルをとらえる効果はこの実験結果よりもさらに高い、と考えられます。

実験に使用された素材の中で、もっとも大きな捕集効果を示したのは掃除機用の紙パックでした。風を遮る効果が高いウインドブレーカーやデニムなども捕集効果が高く、サージカルマスクとほぼ同等の効果が見られました。

また、同じ素材でも、二重にすれば、捕集効果が高まることもわかっています。ただし、高い捕集効果を実現するとその分、呼吸がしにくくなる、という問題が発生します。

特に高齢者や子供にとっては大きな問題なので、マスクを手作りする際には、呼吸のしやすさと感染予防効果をはかりにかけて、素材を選ぶ必要があります。

■まとめ

COVID-19の感染が広がる中で、マスクについての情報は二転三転してきました。WHOが「着用不要」と発表するなど、当初は効果を疑問視する声が海外及び、国内の一部の人たちの間で高く、その情報をいまだに信じている人もいます。

ここにきて、科学的な知見が集まりつつあり、その結果、マスクの有用性はすでに立証された、と言えます。3密を避けにくい冬を健やかに乗り切るためには、確実な着用が必要です。

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