コラム

「北京では息を吸うだけで喫煙できる」というジョークが中国にはあるそうです。急激な経済発展に伴って大量に排出された汚染物質により、大気が汚染されたことで、その害は同国内だけにとどまらず、韓国や日本にまでおよんでいます。

そんな中、このたびWHOが大気汚染に対するガイドラインを16年ぶりに改定しました。新たなガイドラインに基づいて、PM2.5対策のことを考えてみました。

■2005年以来の新基準 AQGを発表

世界保健機関(WHO)は今年9月、新たなグローバル空気質ガイドライン(AQG)を発表しました。旧ガイドラインが策定されたのは2005年なので、16年ぶりとなる改定です。

対象となった大気汚染物質はPM10(径10マイクロメートル程度の粒子)、PM2.5(径2.5マイクロメートル程度の微小粒子)、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄、一酸化炭素の6種。それぞれについて、下回るべき濃度基準の目標値が変更されました。

6種類の中で、日本において注目されているのがPM2.5です。旧ガイドラインでは通年基準を10マイクログラム/立方メートルとしていましたが、新ガイドラインでは5マイクログラム/立方メートルに引き下げられました。

同じく、24時間平均も25マイクログラム/立方メートルから15マイクログラム/立方メートルに引き下げられており、大気汚染に対してより一層の対策を求める姿勢が示されています。

■がんや喘息の原因に! 年間700万人の死亡に影響

PM2.5は粒子径2.5マイクロメートル程度という非常に小さな粒子の総称です。人の髪の毛は直径80~90マイクロメートルなので、その1/40程度。花粉症の原因になるスギ花粉と比べても1/10程度と小さいため、気流に乗ると数千キロ先まで到達します。

工場の排煙や車の排気ガス等から発生することが多く、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩

などの有害物質がしばしば含まれています。粒子径が小さいため、呼吸により吸い込んでしまうと、体内に広く拡散してしまい、さまざまな健康被害をもたらします。

ぜん息や気管支炎といった呼吸器疾患に加え、がんや心臓病、糖尿病の発症にも関係している、と報告されています。

WHOでは世界中で年間700万人がPM2.5により寿命を短縮されている、と警告していますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化をもたらす、との研究報告もあり、近年はさらに危険性が増している、と考えられます。

■近年は低下しているが新基準はクリア困難

国内で観測されるPM2.5の大半は中国から飛来したものです。そのため、季節性があり、西からのジェット気流が日本の上空を通る冬から春にかけては、大気中の濃度が高くなります。

中国国内における規制の強化に加え、日本国内でもハイブリッドカーやエコカーの普及が進むなど、大気汚染対策は近年急ピッチで進んできました。その結果、東京都におけるPM2.5の年平均は10.0マイクログラム/立方メートル程度となっており、WHOの基準はほぼクリアできつつありました。

ところが、新たなAQGでは半分の5マイクログラム/立方メートルが新たな基準となっています。健康への影響をより抑えるための改定ですが、日本で問題となっているPM2.5の大半は中国で発生したものなので、国内でできる対策はあまり多くありません。

■予報を確認して外出制限やマスク装着

個人ができるPM2.5対策として、もっとも有効なのは「なるべく吸い込まない生活」を心がけることです。気象庁がPM2.5の濃度や分布予測を発表しているので、それを確認すれば、「危ない時間帯」がわかります。

自身がいる場所の濃度が高い時間帯には、屋外での運動や活動を避けることで、PM2.5の被曝を避けられます。また、部屋の窓を閉めたり、洗濯物の天日干しを避けたりするなどの工夫をすれば、室内にPM2.5が入るのを防ぐことが可能です。

外出が必要な時にはマスクの着用がおすすめです。一般的な不織布のマスクでも、すき間ができないよう、正しく装着すれば、高い遮蔽効果が期待できるので、PM2.5濃度が高い時間帯に外出する際は着けるのがおすすめです。

■まとめ

コロナ禍の影響を受けて経済活動が鈍化した結果、2020年はPM2.5の濃度が世界中で大幅に下がった、と報じられました。ところが、中国はいち早く経済活動を再開しているので、これから寒くなっていくにつれて、PM2.5の飛来が心配されます。

まだまだコロナ禍が心配される中で健康を守るためには、WHOがより厳しい基準を示したことでもわかる通り、大気汚染に対して、より高い意識を持つ必要がありそうです。

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